【数B】期待値とは コインを使って期待値を求めるゲームに挑戦(九州大)
横一列に並んだ 6 枚の硬貨に対して、以下の操作 L と操作 R を考える。
L:さいころを投げて、出た目と同じ枚数だけ左端から順に硬貨の表と裏を反転する。
R:さいころを投げて、出た目と同じ枚数だけ右端から順に硬貨の表と裏を反転する。
たとえば、表表裏表裏表 と並んだ状態で操作 L を行うときに、3 の目が出た場合は、裏裏表表裏表 となる。
以下、「最初の状態」とは硬貨が 6 枚とも表であることとする。
(1) 最初の状態から操作 L を 2 回続けて行うとき、表が 1 枚となる確率を求めよ。
(2) 最初の状態から L、R の順に操作を行うとき、表の枚数の期待値を求めよ。
(3) 最初の状態から L、R、L の順に操作を行うとき、すべての硬貨が表となる確率を求めよ。(九州大2013)
期待値とは何か
今回は期待値を求める問題に挑戦します。まずは期待値とは何かを押さえておきましょう。
例を挙げます。
$\boxed{0},\boxed{1},\boxed{2},\boxed{3}$ の 4 枚のカードから 1枚を引く作業を繰り返すとします。例えば、$\boxed{3}$、$\boxed{0}$、$\boxed{1}$、$\boxed{3}$、$\boxed{2}$、$\cdots$ という具合に数字がランダムに出てきます。このとき、引いた数字の平均はいくらになるでしょうか?
それぞれの数字は $\displaystyle\frac{1}{4}$ の確率で等しく出現するので、もし作業を 100 回繰り返したなら 0 は 25 回、1 は 25 回…とそれぞれ 25 回ずつ出現しているはずです。
平均は合計を個数で割ればよいので、式としては
$\{0+0+\cdots(25\text{個})+1+1+\cdots(25\text{個})+2+2+\cdots(25\text{個})+3+3+\cdots(25\text{個})\}\div100$
$=(0\times25+1\times25+2\times25+3\times25)\div 100$
$\displaystyle=0\times\frac{25}{100}+1\times\frac{25}{100}+2\times\frac{25}{100}+3\times\frac{25}{100}$
$\displaystyle=0\times\frac{1}{4}+1\times\frac{1}{4}+2\times\frac{1}{4}+3\times\frac{1}{4}$
こうすると、式は 値×確率の合計 という形になることが分かります。
計算すると $\displaystyle\frac{3}{2}=1.5$ です。つまり出現する値は平均で 1.5 になるということです。この平均を期待値と呼びます。
値×確率 の合計
それは平均自体のイメージがつかめてないからかもしれません。平均というのは、ここでいえばもともと 100 回分の合計だった値を 100 で割ることで 1 回分の値として見立てているっていうことです。期待値を求めるのに確率をかけていますが、確率では全ての確率を合計すると 1 になります。要するに、上の式の $\displaystyle 2\times\frac{1}{4}$ などの部分は全体の回数を1 に見立てたときの $2$ の合計を表しているということです。
2回の操作で表が一枚になる場合
では (1) から考えます。
サイコロを2回ふるので、全事象は $6\times 6=36$ です。
次に 操作 L を 2回行って表が 1 になる場合の数を求めます。頭の中で想像するだけではなかなかうまくまとまらないので、ノートなどに実際書いてみると良いでしょう。
書き方のルールは自分なりに決めて構いません。今回は以下のような書き方をしてみます。
まず最初の状態はすべて表なので、これを $0\space0\space0\space0\space0\space0$ とします。サイコロをふって 2 が出たら、$1\space1\space0\space0\space0\space0$。コインを裏返すことを $1$ としています。次のサイコロの目が $5$ なら $1\space1\space1\space1\space1\space0$ とします。最初はすべて 0 なので省略して縦に並べると
$\begin{matrix}&1&1&0&0&0&0\\+)&1&1&1&1&1&0\\\hline &2&2&1&1&1&0\end{matrix}$
足し算をして $2$ になる部分は 2 回裏返しているので表に戻ります。また 1 は裏、0 は一度も裏返していないので表ということです。つまり、足して 0 か 2 であれば表であるということです。この場合は、表表裏裏裏表になっています。
このように色々試してみると、表が 1 枚になる場合は
$\begin{matrix}1&0&0&0&0&0\\1&1&1&1&1&1\end{matrix}$
$\begin{matrix}1&1&1&1&1&1\\1&0&0&0&0&0\end{matrix}$
の 2 通りだけです。
よって $\displaystyle\frac{2}{36}=\frac{1}{18}$(答え)
左右から裏返す場合
(2) では初めに左から裏返し、次は右から裏返します。
サイコロが 1 回目は 1、2回目も 1 だったとして、それを $(1,1)$ と表します。
$(1,1)\space\begin{matrix}1&0&0&0&0&0\\0&0&0&0&0&1\end{matrix}\cdots 4\text{枚}$
上でやったように縦に足し算して 0 か 2 が表なので表は 4 枚です。
$(1,2)\space\begin{matrix}1&0&0&0&0&0\\0&0&0&0&1&1\end{matrix}\cdots 3\text{枚}$
$(1,3)\space\begin{matrix}1&0&0&0&0&0\\0&0&0&1&1&1\end{matrix}\cdots 2\text{枚}$
…
$(6,6)\space\begin{matrix}1&1&1&1&1&1\\1&1&1&1&1&1\end{matrix}\cdots 6\text{枚}$
全 36 パターンを考えていくと表が 0枚、1 枚、2枚、…の場合はそれぞれ、5 通り、10 通り、8 通り、6 通り、4 通り、2 通り、1 通り出てくるはずです。
あとは期待値を求めましょう。
$\displaystyle 0\times\frac{5}{36}+1\times\frac{10}{36}+2\times\frac{8}{36}+3\times\frac{6}{36}+4\times\frac{4}{36}+5\times\frac{2}{36}+6\times\frac{1}{36}=\frac{19}{9}$(答え)
3回裏返す場合
最後に左、右、左から裏返してすべて表になる場合です。全事象は $6^3=216$ 通りです。
これも実際色んな組み合わせを試していくうちに、このパターンしかないことが分かってくると思います。
$\space\begin{matrix}1&0&0&0&0&0\\0&1&1&1&1&1\\1&1&1&1&1&1\end{matrix}$
つまり 2 回目ですべて裏にして 3 回目ですべて裏返して表にするというパターンです。これと同様に
$\space\begin{matrix}1&1&0&0&0&0\\0&0&1&1&1&1\\1&1&1&1&1&1\end{matrix}$
…
$\space\begin{matrix}1&1&1&1&1&0\\0&0&0&0&0&1\\1&1&1&1&1&1\end{matrix}$
というパターンも作れます。よって 5 通りです。
さらに忘れてはいけませんが、順番を入れ替えて 1 回目で全部裏返すパターンもつくれます。
$\space\begin{matrix}1&1&1&1&1&1\\1&0&0&0&0&0\\0&1&1&1&1&1\end{matrix}$ …
これも 5 通りです。
元のルールを忘れないように。3 回目は左から裏返すので
$\space\begin{matrix}1&0&0&0&0&0\\1&1&1&1&1&1\\0&1&1&1&1&1\end{matrix}$
のような形は作れません。
よって
$\displaystyle\frac{5}{216}+\frac{5}{216}=\frac{5}{108}$(答え)
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