
置換積分って「とにかくやり方覚えろ」みたいな感じで習ったけど,結局何やってるかよく分かってないです。

まあ,ほとんどの高校生そんなもの。微積は掘り下げると迷宮に入るからね。ぼちぼち掘り下げるくらいの説明はできるから,一緒に考えてみようか。
ルートの置き換え
$\displaystyle\int\cfrac{x}{\sqrt{x+1}}\space dx$

不定積分の問題。パターンなのだけど,ルートあったらルートごと置換するとよい。
$\sqrt{x+1}=t$ とおくと,両辺を2乗して
$x+1=t^2$
$x=t^2-1$
両辺を微分して
$dx=2t\space dt$

なんで,微分でこれになるの?
置換積分で微分を行う仕組み
$x=t^2-1$ を $t$ で微分すると $\cfrac{dx}{dt}=2t$ です。これを変形して $dx=2t\space dt$ となります。横軸 $t$,縦軸 $x$ のグラフを考えると $\cfrac{dx}{dt}=2t$ は「横方向の微小な変位量と縦方向の微小な変位量の比は $2t$ である。」という意味です。また $dx=2t\space dt$ は$1\space dx=2t\space dt$ と考えることができ,同じように変位量の比が $2t$ であるという意味になります。つまり,言ってることはどちらも同じです。

本来,$dx$ とか $dt$ は数式ではないから方程式として操作できないけど,意味が一緒だから書き換えてもいい,という理屈。

んー,何となくわかったけど,結構複雑。

だね。
置換が終わればあとは普通に積分の計算をしていきます。
$\displaystyle\int\cfrac{t^2-1}{t}\cdot2t\space dt=2\int t^2-1\space dt$
$=2\Big(\cfrac{t^3}{3}-t\Big)+C=\cfrac{2}{3}t(t^2-3)+C$
$t=\sqrt{x+1}$ より
$=\cfrac{2}{3}\sqrt{x+1}(x+1-3)+C$
$=\cfrac{2}{3}(x-2)\sqrt{x+1}+C$ ($C$は積分定数)・・・(答)
三角関数の置換
基本的な仕組みを理解したところで,これを三角関数の式に利用してみましょう。
$\displaystyle\int\cfrac{\cos^3x}{1-\sin x}\space dx$
この問題は少しテクニックが必要で,いったん式を変形してから置換します。
$=\displaystyle\int\cfrac{\cos^3x(1+\sin x)}{(1-\sin x)(1+\sin x)}\space dx$
$\displaystyle=\int\cfrac{\cos^3x(1+\sin x)}{1-\sin^2x}\space dx$
$\displaystyle=\int\cfrac{\cos^3x(1+\sin x)}{\cos^2x}\space dx$
$\displaystyle=\int\cos x(1+\sin x)\space dx$
$\sin x=t$ とすると
$\cos x\space dx=dt$
$dx=\cfrac{dt}{\cos x}$

これでうまいこと $\cos x$ が消去できる。
$\displaystyle=\int\cos x(1+t)\cdot\cfrac{dt}{\cos x}$
$\displaystyle=\int1+t\space dt$
$=t+\cfrac{t^2}{2}+C$
$=t\Big(1+\cfrac{t}{2}\Big)+C$
$=\sin x\Big(1+\cfrac{\sin x}{2}\Big)+C$ ($C$は積分定数) ・・・(答)

何を置換するかってのはひらめきだけど,経験値が必要。とにかく色々問題解いてみてレベルアップすべし。