【高校化学】結合エネルギーと反応熱(センター実戦)

熱化学方程式のあたりって模範解答見ると意味の分からない計算式が書いてあって,どうやって解いたらいいのかさっぱりです。
確かにいきなり計算式たてるのかなり難しいよね。手順を追って説明してみようか。

生成熱を求める問題

$\text{NH}_3$(気) 1 mol 中の N-H 結合をすべて切断するのに必要なエネルギーは何 kJ か。ただし,H-H および N≡N の結合エネルギーはそれぞれ 436 kJ/mol,945 kJ/mol であり,$\text{NH}_3$ (気)の生成熱は次の熱化学方程式で表されるものとする。(センター2017本試・改)

$\cfrac{\enspace3\enspace}{2}\text{H}_2$(気)$+\cfrac{\enspace1\enspace}{2}\text{N}_2$(気)$=\text{NH}_3$(気)$+46$ kJ

連立方程式の要領で解いていく。まずゴール地点をイメージするのが大事。今回は $\text{NH}_3$ の N-H 結合をすべて切りたいのだから,最終的な式には $\text{NH}_3$ と H と N とエネルギー kJ だけが書いてある式にしたい。

エネルギーの出入り

でも,上の式はじめからそうなってますよ。

上の式は $\text{H}_2$ という分子であって,単体の H ではない。

別モノなんですか?

そう,別モノ。$\text{H}_2$ というのは H が 2 つくっついて分子という状態になっている。もし 2 つの H をバラバラに引きはがしたいならエネルギーが必要になる。

そうなんですね。

イメージしづらいかもしれないけど,例えば 2 つの磁石がくっついていたとしてそれを引っ張って離そうとするなら,引っ張るのに力がいるじゃない? H どうしを引っ張るのにもエネルギーがいるということ。

ああ,そういう感じ。

逆にバラバラなものがくっつくときにはエネルギーを放出する。例えば,酸化のときって物質に酸素が結合するけど,これって燃えてるわけだから熱くなるでしょ?そんな感じで,物質がくっつくときには熱を放出する。

なるほど。

こういうのを発熱反応っていうのだけど,たまにこれと反対で熱を吸収する場合もあって吸熱反応という。今回は発熱反応で考えていけばよい。

連立方程式をつくる

ここから連立やるよ。まず H-H の結合エネルギーが 436 kJ/mol。今回は $\text{NH}_3$ がもともと 1 mol になってるし,モル数については考えなくても大丈夫。で,これを式にすると

$2\text{H}$(気)$=\text{H}_2$(気)$+436$ kJ ・・・①
なんでこんな式になるの?

$\text{H}_2$ 分子の H をバラバラにするにはエネルギーを加える必要があるよね。つまり 2H のほうが持ってるエネルギーが大きいから,右辺にエネルギーを加えることで左右がイコールになる。

同じように N の式をつくると

$2\text{N}$(気)$=\text{N}_2$(気)$+945$ kJ ・・・②

そして問題文の式を③としておく。

$2\text{H}$(気)$=\text{H}_2$(気)$+436$ kJ ・・・①

$2\text{N}$(気)$=\text{N}_2$(気)$+945$ kJ ・・・②

$\cfrac{\enspace3\enspace}{2}\text{H}_2$(気)$+\cfrac{\enspace1\enspace}{2}\text{N}_2$(気)$=\text{NH}_3$(気)$+46$ kJ ・・・③

式を連立して不要なものを消去

ここから式を連立していく。もう一度ゴール地点を確認しておくけど,最終的に必要なのは $\text{NH}_3$ と N と H であって,反対に $\text{H}_2$ と $\text{N}_2$ は不要だから消去していく。①,②の係数を③に合わせていくと。

①×$\cfrac{\space3\space}{2}$

$3\text{H}$(気)$=\cfrac{\space3\space}{2}\text{H}_2$(気)$+654$ kJ ・・・①’

②×$\cfrac{\space1\space}{2}$

$\text{N}$(気)$=\cfrac{\space1\space}{2}\text{N}_2$(気)$+472.5$ kJ ・・・②’

①’+②’+③

$3\text{H}$(気)$+\text{N}$(気)$+\cfrac{\space3\space}{2}\text{H}_2$(気)$+\cfrac{\space1\space}{2}\text{N}_2$(気)$=\cfrac{\space3\space}{2}\text{H}_2$(気)$+\cfrac{\space1\space}{2}\text{N}_2$(気)$+\text{NH}_3$(気)$+1172.5$ kJ

左右の同じ項を消去すると

$3\text{H}$(気)$+\text{N}$(気)$=\text{NH}_3$(気)$+1172.5$ kJ

今回は問題文からして有効数字 3 ケタになるから,1170 kJ が答え。

連立方程式作っていけばいいんですね。

あと,これを結合エネルギーの部分だけ計算すると,こう書くことができる。

$Q=436\times\cfrac{\space3\space}{2}+945\times\cfrac{\space1\space}{2}+46=1170$ kJ
いきなりこの式書くの難しい。

確かに。最初は上でやったように連立組んでみて,慣れたら結合エネルギーだけの式をつくってみるといいと思うよ。