【数IIB数列】部分分数分解と打ち消しで数列の和を求める仕組みをはじめから(北海道大2021文系第1問)

「部分分数分解ってブを何回言った?」クイズやると盛り上がるよね。
5 回ですかな。
はい,残念。

初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ が

$S_n=\cfrac{1}{6}n(n+1)(2n+7)$ $(n=1,2,3,\cdots)$

で表される数列 $\{a_n\}$ がある。

(1) $\{a_n\}$ の一般項を求めよ。

(2) $\displaystyle\sum_{k=1}^n \cfrac{1}{a_k}$ を求めよ。

数列の和から一般項を求める

(1)から始めます。

まず,数列の和から一般項を求めるとき,次の公式を思い出しましょう。

$S_n-S_{n-1}=a_n$

これ,どういうこと?

例えばで $S_4$ を考えると

$S_4=a_1+a_2+a_3+a_4$

となります。そして $S_4$ を 1 を一つ減らした $S_3$ は

$S_3=a_1+a_2+a_3$

です。よって

$\begin{aligned}&S_4&=&a_1+a_2+a_3+&a_4\\-)\space&S_3&=&a_1+a_2+a_3\\\hline&&=&&a_4\end{aligned}$

$S_4$ から 1 つ少ない $S_3$ を引くと $a_4$ だけ残るよね。

つまり,$S_n$ から 1 つ少ない $S_{n-1}$ を引くと $a_n$ だけが残るという仕組みです。

引き算で 1 個だけ取り出す感じか。

これを用いて $a_n$ を求めてみましょう。

$S_n-S_{n-1}$
$=\cfrac{1}{6}n(n+1)(2n+7)-\cfrac{1}{6}(n-1)n\{2(n-1)+7\}$

$2(n-1)+7$ のところ間違って $2n-1+7$ ってしがちだから注意して。

$=\cfrac{1}{6}n\{(n+1)(2n+7)-(n-1)(2n+5)\}$

カッコを展開します。

$=\cfrac{1}{6}n(2n^2+9n+7-2n^2-3n+5)$
$=\cfrac{1}{6}n(6n+12)$
$=n(n+2)$

したがって

$a_n=n(n+2)$ (答え)

部分分数分解で和を求める

(2)に進みます。

$\displaystyle\sum_{k=1}^n\cfrac{1}{a_k}=\sum_{k=1}^n\cfrac{1}{n(n+2)}$
$=\cfrac{1}{1\cdot3}+\cfrac{1}{2\cdot4}+\cfrac{1}{3\cdot5}+\cdots+\cfrac{1}{n(n+2)}$

このような形になったら部分分数分解を考えましょう。

分数のかけ算を引き算になおすヤツを部分分数分解って言う。
$\cfrac{1}{1}-\cfrac{1}{3}$ でしたっけ?
$\cfrac{1}{2}\Big(\cfrac{1}{1}-\cfrac{1}{3}\Big)$ が正解。
$\cfrac{1}{2}$ が付くってのがイマイチひらめかない。


部分分数分解の仕組みを理解するには,逆向きに考えるのが手っ取り早いです。

$\cfrac{1}{2}\Big(\cfrac{1}{1}-\cfrac{1}{3}\Big)=\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{3-1}{1\cdot3}$
$=\cfrac{1}{2}\cdot\cfrac{2}{1\cdot3}=\cfrac{1}{1\cdot3}$

計算してみるとちゃんともとに戻ります。

戻るけど $\cfrac{1}{2}$ は?
分母の 2 は $3-1$ の 2 よ。


つまり分母の差が 2 だから,$\cfrac{1}{2}$ をかけます。どうしてこうなるのでしょうか?

ここで,差が 2 である 2 つの数,$k$,$k+2$ で考えてみます。

$\cfrac{1}{k}-\cfrac{1}{k+2}$

通分して

$=\cfrac{k+2-k}{k(k+2)}$
$=\cfrac{2}{k(k+2)}$

分子に 2 が残りました。式を整理しましょう。

$\cfrac{1}{k}-\cfrac{1}{k+2}=\cfrac{2}{k(k+2)}$
$\cfrac{1}{2}\Big(\cfrac{1}{k}-\cfrac{1}{k+2}\Big)=\cfrac{1}{k(k+2)}$

結局,分母の差が 2 なら部分分数分解したときに $\cfrac{1}{2}$ をかけるとつじつまが合うという仕組み。
なんか,ムリヤリな感じ。
そうかもね。ともかく,分母の差が 2 なら $\cfrac{1}{2}$ をかけるし,分母の差が 3 なら $\cfrac{1}{3}$ をかければ良い,と理解しておけば良い。

よって

$=\cfrac{1}{2}\Big\{\Big(\cfrac{1}{1}-\cfrac{1}{3}\Big)+\Big(\cfrac{1}{2}-\cfrac{1}{4}\Big)+\Big(\cfrac{1}{3}-\cfrac{1}{5}\Big)+\cdots+\Big(\cfrac{1}{n-2}-\cfrac{1}{n}\Big)+\Big(\cfrac{1}{n-1}-\cfrac{1}{n+1}\Big)+\Big(\cfrac{1}{n}-\cfrac{1}{n+2}\Big)\Big\}$

こうやってみると,$-\cfrac{1}{3}$ と $+\cfrac{1}{3}$ で打ち消すことができる。

$=\cfrac{1}{2}\Big\{\Big(\cfrac{1}{1}-\cancel\cfrac{1}{3}\Big)+\Big(\cfrac{1}{2}-\cancel\cfrac{1}{4}\Big)+\Big(\cancel\cfrac{1}{3}-\cancel\cfrac{1}{5}\Big)+\cdots+\Big(\cancel\cfrac{1}{n-2}-\cancel\cfrac{1}{n}\Big)+\Big(\cancel\cfrac{1}{n-1}-\cfrac{1}{n+1}\Big)+\Big(\cancel\cfrac{1}{n}-\cfrac{1}{n+2}\Big)\Big\}$

他のヤツの打ち消し方は?
カッコの中でみて,左側の分母は 1,2,3,4,5,・・・って増えていって,右側は,3,4,5,6,7,・・・ってなるよね。つまり 3 より上の数は打ち消しになるけど,1,2 だけは打ち消しにならない。

そして,打ち消しには左右対称性があります。左側から 2 番目,4番目,それ以降全部となるなら,同じように右側から 2 番目,4 番目,それ以降を打ち消します。

よって

$=\cfrac{1}{2}\Big(\cfrac{1}{1}+\cfrac{1}{2}-\cfrac{1}{n+1}-\cfrac{1}{n+2}\Big)$
$=\cfrac{1}{2}\Big\{\cfrac{3}{2}-\cfrac{n+2+n+1}{(n+1)(n+2)}\Big\}$
$=\cfrac{1}{2}\Big\{\cfrac{3}{2}-\cfrac{2n+3}{(n+1)(n+2)}\Big\}$
$=\cfrac{1}{2}\Big\{\cfrac{3(n+1)(n+2)-4n-6}{2(n+1)(n+2)}\Big\}$
$=\cfrac{3n^2+9n+6-4n-6}{4(n+1)(n+2)}$
$=\cfrac{3n^2+5n}{4(n+1)(n+2)}$
$=\cfrac{n(3n+5)}{4(n+1)(n+2)}$ (答え)