【数IIベクトル】正四面体でない四面体と外接球の半径(九州大)

四面体 OABC において,辺 OA の中点と辺 BC の中点を通る直線を $\ell$,辺 OB の中点と辺 CA の中点を通る直線を $m$,辺 OC の中点と辺 AB の中点を通る直線を $n$ とする,$\ell$ ⊥ $m$,$m$ ⊥ $n$,$n$ ⊥ $\ell$ であり,AB = $\sqrt{5}$,BC = $\sqrt{3}$,CA = 2 のとき,以下の問いに答えよ。(九州大2020)

(1) 直線 OB と直線 CA のなす角 $\theta$ $\Big(0$ ≦ $\theta$ ≦ $\cfrac{\pi}{2}\Big)$ を求めよ。

(2) 四面体 OABC の 4 つの頂点をすべて通る球の半径を求めよ。


図を描いてみるとこんな感じ。

何をしたらいいのかさっぱりです。

そうね,大学の二次試験問題って問題解く上で必要な材料が与えられていないことが多い。でも角度出すから内積求めるってのは分かるんじゃない?

$\overrightarrow{\text{OB}}\cdot\overrightarrow{\text{CA}}$ ですか?

そうそう,それそれ。O を原点として $\overrightarrow{\text{OA}}=\vec{a}$ みたいにすると,
$\overrightarrow{\text{CA}}=\vec{a}-\vec{c}$ と表せるから,$\vec{a}$,$\vec{b}$,$\vec{c}$ が分かれば答え出せそうね。
どうやって?
とりあえず問題文で与えられた条件を式にしていく。いっぺん材料揃えた上で考える。

条件を式で表す

OA, BC, OB, AB, OC, AC の中点をそれぞれ L, L’, M, M’, N, N’ とおく。

$\overrightarrow{\text{LL’}}=\overrightarrow{\text{OL’}}-\overrightarrow{\text{OL}}$

$=\cfrac{1}{2}\vec{b}+\cfrac{1}{2}\vec{c}-\cfrac{1}{2}\vec{a}$

$=\cfrac{1}{2}(\vec{b}+\vec{c}-\vec{a})$

$\overrightarrow{\text{MM’}}=\cfrac{1}{2}\vec{a}+\cfrac{1}{2}\vec{c}-\cfrac{1}{2}\vec{b}$

$=\cfrac{1}{2}(\vec{a}+\vec{c}-\vec{b})$

$\overrightarrow{\text{NN’}}=\cfrac{1}{2}\vec{a}+\cfrac{1}{2}\vec{b}-\cfrac{1}{2}\vec{c}$

$=\cfrac{1}{2}(\vec{a}+\vec{b}-\vec{c})$

$\ell$ ⊥ $m$ より

$\overrightarrow{\text{LL’}}\cdot\overrightarrow{\text{MM’}}=\cfrac{1}{4}(\vec{b}+\vec{c}-\vec{a})(\vec{a}+\vec{c}-\vec{b})=0$

ここはそのまま展開しないで少し工夫すると計算が楽になる。

$\{\vec{c}-(\vec{a}-\vec{b})\}\{\vec{c}+(\vec{a}-\vec{b})\}=0$

$|\vec{c}|^2-|\vec{a}-\vec{b}|^2=0$

$|\vec{c}|^2=|\vec{a}-\vec{b}|^2$

$|\vec{c}|=|\vec{a}-\vec{b}|$

ここで $|\vec{a}-\vec{b}|=|\overrightarrow{\text{BA}}|$ だから BA の長さは $\sqrt{5}$ ってのが問題で与えてあったよね。

$|\vec{c}|=\sqrt{5}$

あとは上と同じ手順で。

$m$ ⊥ $n$ より

$\overrightarrow{\text{MM’}}\cdot\overrightarrow{\text{NN’}}=\cfrac{1}{4}(\vec{a}+\vec{c}-\vec{b})(\vec{a}+\vec{b}-\vec{c})=0$

$\{\vec{a}+(\vec{c}-\vec{b})\}\{\vec{a}-(\vec{c}-\vec{b})\}=0$

$|\vec{a}|=|\vec{c}-\vec{b}|=\sqrt{3}$

$n$ ⊥ $\ell$ より

$\overrightarrow{\text{NN’}}\cdot\overrightarrow{\text{LL’}}=\cfrac{1}{4}(\vec{a}+\vec{b}-\vec{c})(\vec{b}+\vec{c}-\vec{a})=0$

$\{\vec{b}-(\vec{c}-\vec{a})\}\{\vec{b}+(\vec{c}-\vec{a})\}=0$

$|\vec{b}|=|\vec{c}-\vec{a}|=2$

内積を求める

これで答えいけますか?
いや,まだ。内積が必要。こういうときは絶対値を二乗して内積をひねり出すとよい。

AB = $\sqrt{5}$ より

$|\overrightarrow{\text{AB}}|^2=5$

$|\vec{b}-\vec{a}|^2=5$

$|\vec{b}|^2-2\vec{a}\cdot\vec{b}+|\vec{a}|^2=5$

$4-2\vec{a}\cdot\vec{b}+3=5$

$2\vec{a}\cdot\vec{b}=2$

$\vec{a}\cdot\vec{b}=1$

同様にして

$|\vec{c}-\vec{b}|^2=3$ より

$\vec{b}\cdot\vec{c}=3$

$|\vec{a}-\vec{c}|^2=4$ より

$\vec{a}\cdot\vec{c}=2$

これで材料が揃った。あとは内積求めるよ。

$\overrightarrow{\text{OB}}\cdot\overrightarrow{\text{CA}}=\vec{b}\cdot(\vec{a}-\vec{c})$

$=\vec{a}\cdot\vec{b}-\vec{b}\cdot\vec{c}$

$=1-3=-2$

また

$\overrightarrow{\text{OB}}\cdot\overrightarrow{\text{CA}}=|\overrightarrow{\text{OB}}||\overrightarrow{\text{CA}}|\cos\theta$

$2\cdot2\cos\theta=-2$

$\cos\theta=-\cfrac{1}{2}$

$\theta=\cfrac{2}{3}\pi$

答え出た。

これ答えじゃないよ。問題文に 0 ≦ $\theta$ ≦ $\cfrac{\pi}{2}$ ってあったでしょ。

2 つの直線どうしの角度は 2 か所ある。$\cfrac{2}{3}\pi$ ってようは 120° のことだけど,その反対側に 60° ができる。だから,答えは 60° の方にしとかないといけない。

0 ≦ $\theta$ ≦ $\cfrac{\pi}{2}$ より

$\theta=\cfrac{\pi}{3}$ (答え)

次に入る。四面体の頂点を通る球を外接球とか言ったりするんだけど,これの半径を求める。

中心求めるってことですか?

そういうこと。言い換えると O,A,B,C からの距離が等しくなる点が中心ってことだよね。

んー,四面体のどっか真ん中辺りってのは分かるけど。

そうそう,真ん中の辺り。今回は(1)で扱った OB と CA の関係から考えていく。

2 直線の位置関係から外接球の中心を求める

(1)で求めたように OB と CA ってどっちも長さが 2 になる。で,それぞれの中点を M - M’ で結んでるよね。

ですね。

二つの直線の関係は上の図のような感じで,お互いを平行に並べたあと,OB をぐるっと 60° ひねった状態だと言えるの。このとき,M-M’ の中点を P としてやると,三平方の定理から言って OP = AP = BP = CP が成り立つのが分かる。つまり,これが求める外接球の半径。

これひらめかない。

確かに難しいね。ただ(1)がヒントになってて,出題者が OB と AC の位置関係考えろって促してるの。OB と AC の長さが同じであるとか,手がかりはあると言えばある。

$\overrightarrow{\text{CA}}\cdot\overrightarrow{\text{MM’}}=(\vec{a}-\vec{c})\cdot\cfrac{1}{2}(\vec{a}+\vec{c}-\vec{b})$

=$\cfrac{1}{2}(|\vec{a}|^2+\vec{a}\cdot\vec{c}-\vec{a}\cdot\vec{b}-\vec{a}\cdot\vec{c}-|\vec{c}|^2+\vec{b}\cdot\vec{c})$

$=\cfrac{1}{2}(3+2-1-2-5+3)=0$

$\overrightarrow{\text{OB}}\cdot\overrightarrow{\text{MM’}}=\vec{b}\cdot\cfrac{1}{2}(\vec{a}+\vec{c}-\vec{b})$

$=\cfrac{1}{2}(\vec{a}\cdot\vec{b}+\vec{b}\cdot\vec{c}-|\vec{b}|^2)$

$=\cfrac{1}{2}(1+3-4)=0$

よって,CA ⊥ MM’,OB ⊥ MM’

$|\text{MM’}|^2=\cfrac{1}{4}(\vec{a}+\vec{c}-\vec{b})^2$

$=\cfrac{1}{4}(|\vec{a}|^2+|\vec{c}|^2+|\vec{b}|^2-2\vec{a}\cdot\vec{b}-2\vec{b}\cdot\vec{c}+2\vec{a}\cdot\vec{c})$

$=\cfrac{1}{4}(3+5+4-2\cdot1-2\cdot3+2\cdot2)$

$=2$

$|\text{MM’}|=\sqrt{2}$

よって PM = $\cfrac{\sqrt{2}}{2}$

また OB = 2 より,OM = 1 だから,三平方の定理より

$\text{OP}^2=1^2+\Big(\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)^2=\cfrac{3}{2}$

OP = $\cfrac{\sqrt{6}}{2}$ (答え)

難易度の高い問題になると何やっていいか分からないことも多いと思うけど,大事なのはいっぺん問題文の条件を式にして見ること。スマートに解くのは難しいから実際に式を書いてみて,そこから突破口を探り当てていくとよい。そのために試行錯誤で 2,3 回リトライする羽目になるのも普通だから,とにかく一回失敗してもあきらめないことだね。