教室で子供の自主性を育てるいくつかの方法

子供が自発的に学び、成長する環境を作り出すためにはどのようなことを考慮すべきでしょうか。アメリカの学校教師ジュリー・デニーンが20の提案をしています。

ここでは、記事の中からいくつか参考になるヒントをまとめていきたいと思います。

失敗から学ぶ

デニーンは失敗は学習のための最も重要なツールであると述べています。例えばボールを地面に落として、それが転がったり跳ね返ったりする様子を観察することで、その物体の性質をより深く知ることができます。試行錯誤をすることで、ボールを眺めているだけでは想像できなかった新しい発見を得られるかもしれません。生徒に失敗とは致命的なものではないと教えることが大切です。

子供に失敗をさせることは効率の悪いことですが、大人は子供の失敗に寛容であるべきです。ペーパーテストを突破する方法だけを押し付けると、子供の好奇心は失われます。

受験生は大学入試のために懸命に勉強しますが、ペーパーテストのための知識は試験が終われば頭の中から消えてしまうものです。ましてや、その知識自体これからAIに取って代わられることになります。

AIは成功と失敗を判断しません。何が成功で何が失敗かを機械に教えるのはあくまで人間です。AIが得意なのは既知の状況に対して高い正答率を導くことであり、未知の発見ではありません。将来の人類はAIと共存していくことが避けられませんが、AIに取って代わられない人材とは、正解と失敗を判断してAIに教えることができる人間であり、AIに判断させる未知の材料を考案できる人間です。学習プロセスに豊富な失敗を取り入れた人間は、AIに取って代わられる可能性が低いと言えます。

失敗に寛容であることは、子供が自立する上で欠かせない。

ステップの構築

教師は生徒を段階的に支援します。はじめに概念を示して生徒を支援しながら、最終的に生徒が自分で取り組めるように促します。自転車で言えば、まず大人が実際に自転車に乗っている姿を見せ、次に大人がハンドルやサドルを支えながら子供に自転車をこがせ、最後にその手を離すようなものです。このステップは子供が自分の能力に確信を抱かせるために必要なものです。

また、子供が自信を持つまで絶えずほめることが大切です。子供をほめるだけでは成長しないと言われることも多いですが、大人が子供の能力を認めることで自分自身の持つ能力に気づかせることができます。

その上で生徒が自分の意見を表明できるように促しましょう。他人の意見に補足し、反対し、質問し、感想を述べる方法を具体的に示します。声を出すことで自分がその問題に関わっているという感覚を得ることができ、解決したときにより大きな達成感を得ることができます。

失敗の克服と管理可能な目標の設定

誰にでも失敗はあります。生徒が失敗したときに教師がすべきことは、失敗の苦しみに共感することです。そして、失敗したポイントから1歩前に戻り、目標の全体像を捉えなおし、その目標を小さなステップに分解していく方法を教えます。目標をクリアすることよりも実行可能なスモールステップを構築する方が重要です。

また、そうしたスモールステップは教師と生徒の両者が共有すべきものです。教師は子供の能力を信頼する必要があり、スモールステップに取り組む子供が目の前にいるときには、全体像はいったん脇に置いた方がよいでしょう。つまり、「君は○○はできるのに、どうしてこれができないんだ。」という類の批判をしないということです。

さらに、スモールステップを効果的なものにするためには、定期試験や小テストなどの試験の結果を素早く返却することが大切です。フィードバックが遅ければ、子供たちはできなかったことを修正する意欲を失います。

勤勉さや忍耐力を評価する

大人が生きる現実の社会で必要なものは、才能だけではありません。世の中にはクリエイティブでなくても社会や組織を持続させるために欠かせない仕事が数多くあります。たとえクリエイターの仕事に就いたとしても、その人が日々の経費の管理をコツコツと続けることができなければ、いずれ仕事は成り立たなくなるでしょう。勤勉さや忍耐力、誠実さ、積極性は、むしろ勤務時間の大半において才能より重要であることの方が多いのです。教師がテストの点数を無視することはできませんが、授業の中で現実に即した価値観を生徒に示すことが大切です。

勤勉さや忍耐を評価する姿勢は、成績というよりむしろ実社会で生き抜くために必要である。

教師の成果を気にしない

教師の仕事はストレスの多いものです。ストレスをためないようにする一つのポイントは、成績のよい生徒をたくさん生み出すことを自分の業務の評価としないということです。

ピアサポートと言って、生徒は周りにいる友人たちと励まし合ったり牽制したりすることで成長することができます。また、失敗から学ぶことで自ら成長することができます。成果がでないことにイライラするより、生徒の能力を信頼していることを相手に伝えた方が結果的に生産性が高くなるでしょう。