【数Ⅲ微分の応用】ざっくりイメージから漸近線を導く

微分のとこでグラフ描いてるんですけど漸近線の求め方が分からないです。参考書に書いてある $\displaystyle\lim_{x\rightarrow\infty}\{f(x)-(ax+b)\}=0$ ってどういうこと?
確かにパッと見た目じゃ分からないかもね。それ、いったん置いておいて極限のイメージから漸近線作ってみようか。

増減表を作る

問題 関数 $\displaystyle y=\frac{x^2}{x-1}$ の増減、グラフの凹凸、漸近線を調べてグラフの概形をかけ。


こういう形が来たら、まずは分母をチェックするようにしましょう。$x$ に $1$ を代入すると分母が $0$ になってしまうので、式が成り立ちません。よって、
$\displaystyle y=\frac{x^2}{x-1}\enspace (x\ne 1)$
となります。

ここから増減表を作るために、$y’,y”$ を求めていきましょう。
$\displaystyle y’=\frac{(x^2)'(x-1)-x^2(x-1)’}{(x-1)^2}$

ここは割り算の微分公式を思い出してね。
商の導関数
$\displaystyle \left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}’=\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}$

$\displaystyle =\frac{2x(x-1)-x^2}{(x-1)^2}$
$\displaystyle=\frac{2x^2-2x-x^2}{(x-1)^2}$
$\displaystyle=\frac{x^2-2x}{(x-1)^2}$
また
$\displaystyle y”=\frac{(x^2-2x)'(x-1)^2-(x^2-2x)\{(x-1)^2\}’}{(x-1)^4}$
$\displaystyle =\frac{(2x-2)(x-1)^2-(x^2-2x)\cdot2(x-1)}{(x-1)^4}$
$\displaystyle=\frac{(2x-2)(x-1)-2(x^2-2x)}{(x-1)^3}$
$\displaystyle=\frac{2x^2-2x-2x+2-2x^2+4x}{(x-1)^3}$
$\displaystyle=\frac{2}{(x-1)^3}$

次に極値を求めます。
$y’=0$ のとき
$\displaystyle \frac{x^2-2x}{(x-1)^2}=0$
$x^2-2x=0$
$x(x-2)=0$
$x=0,2$

分母をはらう計算はあくまで $x\not =1$ の条件において成り立つ。だから解答の中のどこかに必ずこの一言を入れておく。

ここから極値を求めると、$\displaystyle f(0)=0,\enspace f(2)=4$

プラスマイナスの条件を考える

次に導関数の+-の条件を考えます。

そうそう、これニガテ。

$\displaystyle y’=\frac{x^2-2x}{(x-1)^2}$ について考えてみると、分母は2乗しているので $x$ にどんな値が入ろうと常に+になります。プラス×プラス=プラス、マイナス×マイナス=プラスでした。

あとは分子の符号によって+-が決まるので、分子の方に適当に色々な値を放り込んでみましょう。$x^2-2x$ において $x$ に $-1$ を代入すると、$3$ になるので+の値です。あとは $x=2$ で極値をとるので、それの右側の $x=3$ あたりで考えます。そうすると $ 3^2-2\times3=3$ となり+の値となります。

これで増減表の $f'(x)$ の部分は完成です。

次に $f”(x)$ を考えます。$\displaystyle y”=\frac{2}{(x-1)^3}$ は分母が+になる場合とーになる場合があるので気を付けましょう。+の3乗は+になるし、ーの3乗はーになります。例えば、$(-2)^3=-8$ です。

分母は $x$ が $1$ のときを境目にして、+とーに分かれます。よって
$x<1$ のとき $y”<0$
また
$x>1$ のとき $y”>0$
となります。これで増減表の材料がそろいました。

$x$ $\cdots$ 0 $\cdots$ 1 $\cdots$ 2 $\cdots$

$f'(x)$

0 / 0
$f”(x)$ /
$f(x)$ 極大
0
/ 極小
4

不定形の解消

あとは漸近線を求めてグラフの完成です。

ここからは推理ゲーム。まずは$ f(1)$ の値が存在しないことから $x=1$ のところで漸近線を疑うとよい。
何で?
増減表で $0$ と $1$ の間が になってる。グラフが下の方に行って $1$ のところが存在しないってのは、∞ まで振り切れてるからだと推測できるよね。

実際に計算してみましょう。しかし $\displaystyle y=\frac{x^2}{x-1}$ は $x\rightarrow\infty$ とすると $\displaystyle \frac{\infty}{\infty}$ となります。いわゆる不定形というヤツです。

こうなった場合は不定形を解消していきます。
方針としては、とにかく約分したいから分子にムリヤリ $x-1$ を作ります
$\displaystyle y=\frac{x^2}{x-1}$
$\displaystyle=\frac{x^2-2x+1+2x-1}{x-1}$

これで $2x$ と $1$ はお互いに打消しあって元の式と同じことになります。ここから
$\displaystyle =\frac{(x-1)^2+2x-1}{x-1}$
$\displaystyle=\frac{(x-1)^2}{x-1}+\frac{2x}{x-1}-\frac{1}{x-1}$
$\displaystyle =x-1+\frac{2x}{x-1}-\frac{1}{x-1}$

これでもまだ真ん中の項が不定形なので、さらに分子にムリヤリ $x-1$ を作ります。
$\displaystyle=x-1+\frac{2x-2+2}{x-1}-\frac{1}{x-1}$
$\displaystyle=x-1+\frac{2(x-1)+2}{x-1}-\frac{1}{x-1}$

打消しの部分がひらめかないです。

ここは2手先を読む詰将棋の世界。打消しの次で必ず因数分解してるから、それをイメージして1手先を考えるのよ。理屈というより技を盗んで。

$\displaystyle =x-1+\frac{2(x-1)}{x-1}+\frac{2}{x-1}-\frac{1}{x-1}$
$\displaystyle=x-1+2+\frac{1}{x-1}$
$\displaystyle=x+1+\frac{1}{x-1}$
これで不定形が解消できました。

$x=1$ の漸近線

次に極限をとって、$x=1$ が漸近線であることを示します。

$\displaystyle \lim_{x\rightarrow1+0} x+1+\frac{1}{x-1}$

$1+0$ ってどういうことですか?
あんまり深く考えないで。+0 は右側から寄せるっていう記号で -0 は左側から寄せるっていう記号。

あとはイメージです。$\displaystyle\frac{1}{x-1}$ の $x$ を 右側から $1$ に寄せていきます。
$\displaystyle \frac{1}{2-1}=1\\\displaystyle\frac{1}{1.1-1}=10\\\displaystyle\frac{1}{1.01-1}=100$
このようにざっくりイメージで言うと、$1$ に近づくにつれ値は大きくなりそうです。よって
$\displaystyle \lim_{x\rightarrow1+0} x+1+\frac{1}{x-1}=\infty$
今度は左側から $1$ に寄せてみましょう。
$\displaystyle \frac{1}{0-1}=-1\\\displaystyle\frac{1}{0.9-1}=-10\\\displaystyle\frac{1}{0.99-1}=-100$
よって
$\displaystyle \lim_{x\rightarrow1-0} x+1+\frac{1}{x-1}=-\infty$
これで、左右から考えて ∞ に発散することが分かったので、$x=1$ は漸近線であるということができます。

$x+1$ の漸近線

そして $\displaystyle x+1+\frac{1}{x-1}$ から、$y=x+1$ という漸近線を作ることができます。

どういうこと?

$x$ を $+\infty$ の方向にふってみましょう。$x$ に大きな値を代入してみます。

$\displaystyle 101+1+\frac{1}{101-1}=101+1+0.01\\\displaystyle10001+1+\frac{1}{10001-1}=10001+1+0.0001\\\displaystyle 1000001+1+\frac{1}{10000001-1}=10000001+1+0.0000001$

このように $x$ が大きな値になるほど、$x+1$ に近づいていきます。

$\displaystyle \frac{1}{x-1}$ の部分が消えていく感じですね。

そういうこと。

よって、$x+1$ も漸近線になります。以上よりグラフを描くと

これで出来上がり。

もう少し正確に言うと

問題は解けましたが、最後に参考書などに載っている $\displaystyle\lim_{x\rightarrow\infty}\{f(x)-(ax+b)\}=0$ について考えてみましょう。

今回の問題では $\displaystyle f(x)=x+1+\frac{1}{x-1}$、$ax+b=x+1$ ということになります。そして式はそれぞれ $y$ 座標を表していて $y=f(x)$、$y=x+1$ です。図で表すと

$f(x)-(x+1)$ はグラフの赤い部分を指しています。これは右にいくほど小さくなっていき、限りなく $0$ に近づいていくはずです。式で示すと

$\displaystyle \lim_{x\rightarrow\infty} x+1+\frac{1}{x-1}-(x+1)\\\displaystyle=\lim_{x\rightarrow\infty} \frac{1}{x-1}\\=0$

このことより、2つのグラフの差が $0$ に近づいていくので、$y=x+1$ は漸近線であるということができるのです。