【数IA・IIB整数・数列】xn^3+yn^2が整数になるときの条件を考える(千葉大2021第4問)
$m$ を正の整数とする。座標平面上の点 $(x,y)$ で
$xn^3+yn^2$ $(n=1,2,3,\cdots)$
がすべて整数であるようなものは,連立不等式
$x\geqq0,y\geqq0,x+y\leqq m$
の表す領域に何個あるか答えよ。
x+y が整数になる場合
この問題では,示された条件がどういうときに成り立つのかを検討していきます。
もし,$n=1$ だとしたら,$xn^3+yn^2$ は
$x+y$
となります。これが整数になるので,$k$ を整数として
$k=x+y$
$y=-x+k$
となります。
このとき,$y=-x+k$ 上の点であれば,$x$ が何であろうが,$x+y$ は $k$ という整数になります。$x$ が実数であれば有理数でも無理数でも何でもオッケーです。
ここで確認したいのは,$x$ が何らかの値であるとき,それに対応する $y$ が必ず存在するということです。
無理数だと成り立たない
しかし問題文の条件は,すべての自然数 $n$ で整数になるというものです。
次に,$n=2$ として
$8x+4y$
とすると,$x$ は何でも良いとはいかなくなります。
まず,$x$ が無理数だと成り立ちません。
たとえば,前にもどって $n=1$ のとき,$x=\sqrt{2},k=3$ とすると
$y=-\sqrt{2}+3$
となります。$(x,y)=(\sqrt{2},3-\sqrt{2})$ は $x+y=3$ となるので,$x+y$ が整数になるパターンです。
次に,$8x+4y$ に $(x,y)=(\sqrt{2},3-\sqrt{2})$ を代入すると
$8\sqrt{2}+4(3-\sqrt{2})=4\sqrt{2}+12$
となるので,整数になりません。
これは $\sqrt{2}$ だけでなく無理数全体に当てはまる話です。$x+y$ において $x$ を無理数とすると,$y$ も無理数となり,$n=2$ としたときに無理数が消去できなくなるので,$8x+4y$ は整数になりません。
問題文の条件はすべての自然数 $n$ において整数にならならいといけないので,ここでアウトということになります。
x は有理数
となると,$x$ は有理数です。有理数は
$\cfrac{b}{a}$ ($b$ は整数,$a$ は 0 でない整数)
という形で表すことができます。
$x$ は $x=\cfrac{b}{a}$ という形で表せるとして,もう少し条件を絞ることはできないでしょうか。
もとの式を変形してみます。
$xn^3+yn^2$
$=n^2(xn+y)$
$=n^2\{x(n-1)+x+y\}$
$=xn^2(n-1)+n^2(x+y)$
上で述べた通り,何らかの有理数 $x$ が存在するとき,$x+y$ が整数になる $y$ は必ず存在します。
そこで,$n=1$ のとき $x+y$ は整数であるとして,$n=2$ 以降を検討しています。
$xn^2(n-1)+n^2(x+y)$
まず,$n$ が自然数であるため,$n^2(x+y)$ は整数です。
その上で $xn^2(n-1)$ も整数であれば,式全体が整数であると言えます。
$xn^2(n-1)$
$=x\cdot n\cdot n(n-1)$
式を分解して考えましょう。
$n(n-1)$ は偶数と奇数のかけ算として考えられます。たとえば,$n=3$ なら $n(n-1)=3\cdot2$ で,$n=4$ なら $n(n-1)=4\cdot3$ です。どちらかが偶数ならもう一つは奇数になります。
このとき,偶数×奇数=偶数です。$n$ が偶数であっても奇数であっても,$n(n-1)$ は偶数になります。
それに $n$ をかけます。$n$ が偶数のとき,$n\cdot n(n-1)$ は 偶数×偶数=偶数 となります。また,$n$ が奇数のとき,奇数×偶数=偶数です。
結果として,$n^2(n-1)$ は偶数であることが分かります。
よって,$x$ が $\cfrac{\textsf{整数}}{2}$ の形であれば,$xn^2(n-1)$ はつねに整数になるはずです。
これをもう少し掘り下げましょう。
(i) $n$ が偶数のとき,$n=2t$ として
$xn^2(n-1)$
$=x(2t)^2(2t-1)$
$=x\cdot4t^2(2t-1)$
$n^2(n-1)$ は 4 の倍数となるので,$\cfrac{\textsf{整数}}{4}$ としても,$xn^2(n-1)$ は整数になります。
(ii) $n$ が奇数のとき,$n=2t+1$ として
$xn^2(n-1)$
$=x\cdot(2t+1)^2(2t+1-1)$
$=x\cdot(2t+1)^2\cdot2t$
$2t+1$ は奇数だから,$(2t+1)^2$ は奇数×奇数=奇数となり,2 で割り切れません。つまり,$x$ を $\cfrac{\textsf{整数}}{4}$ とすると,$t$ の値によって $xn^2(n-1)$ は整数になったりならなかったりします。しかし,$x$ を $\cfrac{\textsf{整数}}{2}$ とすれば整数になると言えます。
(i),(ii) より $s$ を整数として,$x=\cfrac{s}{2}$ のとき,すべての自然数 $n$ において $xn^3+yn^2$ は整数となる。
これでようやく点を絞り込むことができました,$x$ は何でもよいわけではなく,$x=\cfrac{1}{2},\cfrac{2}{2},\cfrac{3}{2},\cdots$ のときにだけ,$xn^3+yn^2$ が整数となります。
点の数を数える
問題文の $x\geqq0,y\geqq0,x+y\leqq m$ にもとづいてグラフ上に点をおいていくと,次のようなグラフになります。
$x$ が $\cfrac{s}{2}$ の形のときに $x+y$ は整数となり,$xn^3+yn^2$ も整数となります。
たとえば,グラフ上の点 $\Big(\cfrac{1}{2},\cfrac{1}{2}\Big)$ で言えば,$x+y=\cfrac{1}{2}+\cfrac{1}{2}=1$ で整数となります。そして $\cfrac{1}{2}n^2+\cfrac{1}{2}n^2$ も整数となるわけです。
また,$(x,y)=(0,0)$ のときも,$xn^3+yn^2$ は整数(つまり 0 )になるので,数え忘れないようにしましょう。
グラフ上の点の数を数えると
$x+y=1$ のときは 3 個。
$x+y=2$ のときは 5 個。
$x+y=k$ のときは $2k+1$ 個。
となります。
これらをすべて足し合わせていくので
$\displaystyle\sum_{k=0}^m 2k+1$
$=1+2\cdot\cfrac{1}{2}m(m+1)+m$
$=m(m+1)+m+1$
$=(m+1)^2$ (答え)
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