【数IA三角比】塔の高さを三角比で求める問題/三角比で高さ・底辺を求める考え方(神戸大文系第3問)
水平な地面に一本の塔が垂直に建っている(太さは無視する)。塔の先端を P とし,足元の地点を H とする。また,H を通らない一本の道が一直線に伸びている(幅は無視する)。道の途中に 3 地点 A,B,C がこの順にあり,BC = 2AB をみたしている。以下の問に答えよ。
(1) $2\text{AH}^2-3\text{BH}^2+\text{CH}^2=6\text{AB}^2$ が成り立つことを示せ。
(2) A,B,C から P を見上げた角度 $\angle\text{PAH}$,$\angle\text{PBH}$,$\angle\text{PCH}$ はそれぞれ 45°,60°,30° であった。AB = 100m のとき,党の高さ PH (m) の整数部分を求めよ。
(3) (2)において,H と道の距離 (m) の整数部分を求めよ。
余弦定理
(1) $2\text{AH}^2-3\text{BH}^2+\text{CH}^2=6\text{AB}^2$ が成り立つことを示せ。
ここは余弦定理を使っていきます。
余弦定理 $a^2=b^2+c^2-2bc\cos A$
角は上のように置いて,1か所で対処すべきです。△ABH と △ACH について考え,それらに共通する角を $\theta$ とします。
△ABH と △ACH について余弦定理を用います。
$\text{BH}^2=\text{AH}^2+\text{AB}^2-2\text{AH}\cdot\text{AB}\cos\theta$ ・・・①
$\text{AC}=3\text{AB}$ より
$\text{CH}^2=\text{AH}^2+(3\text{AB})^2-2\text{AH}\cdot3\text{AB}\cos\theta$ ・・・②
①×3 - ②
$3\text{BH}^2-\text{CH}^2=2\text{AH}^2-6\text{AB}^2$
$2\text{AH}^2-3\text{BH}^2+\text{CH}^2=6\text{AB}^2$ (証明終わり)
塔の高さ
(2) A,B,C から P を見上げた角度 $\angle\text{PAH}$,$\angle\text{PBH}$,$\angle\text{PCH}$ はそれぞれ 45°,60°,30° であった。AB = 100m のとき,党の高さ PH (m) の整数部分を求めよ。
△AHP は $1:1:\sqrt{2}$ の三角形です。そこから
$\text{PH}=\text{AH}$ ・・・③
が成り立ちます。
次に,△BHP は $1:2:\sqrt{3}$ の三角形です。
$\text{BH}:\text{PH}=1:\sqrt{3}$
$\text{PH}=\sqrt{3}\text{BH}$
$\text{BH}=\cfrac{\text{PH}}{\sqrt{3}}$ ・・・④
さらに,△CHP も $1:2:\sqrt{3}$ の三角形です。
$\text{CH}:\text{PH}=\sqrt{3}:1$
$\text{CH}=\sqrt{3}\text{PH}$ ・・・⑤
これらを(1)の式に代入すると
$2\text{AH}^2-3\text{BH}^2+\text{CH}^2=6\text{AB}^2$
$2\text{PH}^2-3\Big(\cfrac{\text{PH}}{\sqrt{3}}\Big)^2+(\sqrt{3}\text{PH})^2=6\text{AB}^2$
$2\text{PH}^2-\text{PH}^2+3\text{PH}^2=6\text{AB}^2$
$4\text{PH}^2=6\text{AB}^2$
$\text{PH}\geqq0$,$\text{AB}\geqq0$ より
$2\text{PH}=\sqrt{6}\text{AB}$
$\text{PH}=\cfrac{\sqrt{6}}{2}\text{AB}$
$\text{AB}=100$ より
$\text{PH}=50\sqrt{6}$
答えは整数で求めます。そこで,$50\sqrt{6}$ はいくつになるかを考えなければなりません。
$\sqrt{4}<\sqrt{6}<\sqrt{9}$ より
$2<\sqrt{6}<3$
$\sqrt{6}$ は 2 と 3 の間のどこかです。ここからは値をあてはめながら範囲を絞り込んでいきます。
たとえば,真ん中をとって 2.5 の 2 乗を考えてみます。
$2.5^2=6.25$
6 を超えました。そこで,2.4 の 2 乗を試します。
$2.4^2=5.76$
6 を下回りました。
ここから,$2.4<\sqrt{6}<2.5$ が分かります。さらに絞り込んでいきましょう。
$2.45^2=6.0025$
$2.44^2=5.9536$
よって $2.44<\sqrt{6}<2.45$
ここから
$50\times2.44=122$
$50\times2.45=122.5$
ここまで絞り込めば整数部分は 122 ということで間違いありません。
したがって,122m (答え)
距離を求める
(3) (2)において,H と道の距離 (m) の整数部分を求めよ。
点 H から直線に下ろした垂線の足を D とすると,AD⊥DH となります。このとき,DH が距離です。
DH は三角比を使って
$\text{DH}=\text{AH}\sin\theta$
で求められます。
三角比で底辺と高さを求める
考え方は上のようになります。
三角比のもともとの定義を思い出しましょう。
直角三角形があるとき,$\cfrac{\textsf{高さ}}{\textsf{斜辺}}$ の値が $\sin$ で,$\cfrac{\textsf{底辺}}{\textsf{斜辺}}$ の値が $\cos$ でした。
$\textsf{斜辺}\times\sin\theta=\textsf{斜辺}\times\cfrac{\textsf{高さ}}{\textsf{斜辺}}$
となるので,約分すると
$=\cancel{\textsf{斜辺}}\times\cfrac{\textsf{高さ}}{\cancel{\textsf{斜辺}}}=\textsf{高さ}$
こうして高さが求められます。
同じようにして,斜辺に $\cos$ をかければ底辺が分かります。
sin を求めて距離を出す
問題に戻りましょう。
こうなると,$\sin\theta$ の値が必要です。
(2)より BH の長さは分かるので,△ABH を使ってみます。
$\text{BH}=\cfrac{\text{PH}}{\sqrt{3}}$ より
$\text{AH}=\text{PH}$ だから
$\text{BH}=\cfrac{\text{AH}}{\sqrt{3}}$
$=\cfrac{50\sqrt{6}}{\sqrt{3}}$
$=50\sqrt{2}$
また,$\text{AB}=100$ だから
$\text{AH}:\text{AB}:\text{BH}=50\sqrt{6}:100:50\sqrt{2}$
$=\sqrt{6}:2:\sqrt{2}$
ここから余弦定理を用いていったん $\cos$ の値を求めます。このとき,辺の長さをそのまま用いても計算できますが,代わりに辺の比を使うこともできます。
余弦定理より
$(\sqrt{2})^2=(\sqrt{6})^2+2^2-2\cdot\sqrt{6}\cdot2\cos\theta$
$2=6+4-4\sqrt{6}\cos\theta$
$4\sqrt{6}\cos\theta=8$
$\cos\theta=\cfrac{2}{\sqrt{6}}$
ここから $\sin\theta$ を求めます。
公式 $\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$
$\sin^2\theta+\Big(\cfrac{2}{\sqrt{6}}\Big)^2=1$
$\sin^2\theta=1-\cfrac{2}{3}=\cfrac{1}{3}$
$\sin\theta=\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
ようやく $\sin\theta$ の値が求められました。
$\text{DH}=\text{AH}\sin\theta$ だから
$\text{DH}=122\cdot\cfrac{1}{\sqrt{3}}$
$=\cfrac{122}{1.73}=70.5\cdots$
したがって整数部分は 70m。(答え)
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