区分求積の練習問題(横浜国立大2016理系第1問)

次の問いに答えよ。

(1) 関数 $f(x)=\cfrac{\log(1-x)}{x}$ は $0<x<1$ の範囲で減少することを示せ。

(2) 極限値

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\cfrac{1}{\tan\Bigg(\cfrac{(n+k)\pi}{6n}\Bigg)}$

を求めよ。

微分係数が負であることを示す

(1)から始めます。

先に理屈から言えば,式を微分して,微分係数がマイナスであることを示せば良いことになります。

分数だから,商の微分を使いましょう。

商の微分
$\Big\{\cfrac{f(x)}{g(x)}\Big\}’=\cfrac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}$

$f(x)=\cfrac{\log(1-x)}{x}$
$f'(x)=\cfrac{\{\log(1-x)\}’x-\log(1-x)(x)’}{x^2}$
$=\cfrac{\cfrac{1}{1-x}(-1)x-\log(1-x)}{x^2}$

$\log(1-x)$ は合成関数だから,微分したときに $1-x$ を微分した $-1$ をかけるのを忘れずに。

分母と分子に $1-x$ をかけて式を整理します。

$=\cfrac{-x-(1-x)\log(1-x)}{x^2(1-x)}$

問われているのは,これが負の数になるのを示すことでした。分母の $x^2(1-x)$ は $0<x<1$ の範囲ではつねに正の数となるので,あとは分子が負の数であることを示しましょう。そのため,再び微分します。今度はかけ算の微分の公式を使いましょう。

積の微分
$\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$

$g(x)=-x-(1-x)\log(1-x)$ として
$g'(x)=-1-\Big\{-\log(1-x)-(1-x)\cfrac{1}{x-1}\Big\}$
$=-1+\log(1-x)+1$
$=\log(1-x)<0$

これで負の数ってなるんですか?
だって,$\log1=0$ だから,真数が 1 より小さくなると $\log$ の値はマイナスになるよ。

よって,$g(x)$ は $0<x<1$ で単調に減少する。したがって,$f'(x)$ は負の値となるので,$f(x)$ は単調に減少する。(証明終わり)

区分求積

(2)に進みます。

極限と総和の組み合わせを見たときに,区分求積を使うことがピンと来るようになりましょう。

区分求積
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{n}\sum_{k=1}^nf\Big(\cfrac{k}{n}\Big)=\int_0^1f(x)\space dx$

ざっくりイメージで言えば長方形の面積を足し合わせていくのが区分求積でした。長方形のヨコの長さを $\cfrac{1}{n}$,タテの長さを $f\Big(\cfrac{k}{n}\Big)$ として,$k=1,2,3,\cdots$ の面積を足し合わせると

$\displaystyle\cfrac{1}{n}\times f\Big(\cfrac{1}{n}\Big)+\cfrac{1}{n}\times f\Big(\cfrac{2}{n}\Big)+\cfrac{1}{n}\times f\Big(\cfrac{3}{n}\Big)+\cdots+\cfrac{1}{n}\times f\Big(\cfrac{n}{n}\Big)=\cfrac{1}{n}\sum_{k=1}^nf\Big(\cfrac{k}{n}\Big)$

一番最後の $k$ の値は,$\cfrac{n}{n}=1$ なので,区間は $[0,1]$ ということになります。この状態では,$[0,1]$ の区間を $n$ 個で分割していることになります。あとは,$n$ 個の区切りを限りなく細かくしていけば,$f(x)$ の積分の結果に限りなく近づいていくという仕組みです。

計算のおおまかなイメージをつかみながら公式を覚えると,忘れにくくなると思います。

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\cfrac{1}{\tan\bigg(\cfrac{(n+k)\pi}{6n}\bigg)}$

このままでは積分に置き換えはできません。公式を見れば分かる通り,$k$ の部分を $\cfrac{k}{n}$ という形にしなければなりません。

$\displaystyle=\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\cfrac{1}{\tan\Bigg(\cfrac{(1+\cfrac{k}{n})\pi}{6}\Bigg)}$

あとは $\cfrac{k}{n}$ の部分を $x$ に置きかえれば積分の式になります。

$\displaystyle=\int_0^1\cfrac{1}{\tan\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)}\space dx$

$\tan$ を積分するときには,$\tan\theta=\cfrac{\sin\theta}{\cos\theta}$ に変形します。ここでは,$\cfrac{1}{\tan\theta}=\cfrac{\cos\theta}{\sin\theta}$ です。

$\displaystyle=\int_0^1\cfrac{\cos\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)}{\sin\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)}\space dx$

$\displaystyle=\cfrac{6}{\pi}\bigg[\log\bigg\{\sin\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)\bigg\}\bigg]_0^1$

なんでこうなるのかがイマイチ分かりません。
逆向きで考えると分かるよ。

$\log$ の微分は $(\log x)’=\cfrac{1}{x}$ でした。そして,上の式は合成関数なので,$\sin$ を微分したものをかける必要があります。そして $\sin\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)$ 自体もまた合成関数なので,$\cfrac{(1+x)\pi}{6}$ を微分したものをかけるという流れです。

$\cfrac{6}{\pi}\log\bigg\{\sin\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)\bigg\}$ を微分すると

$\cfrac{6}{\pi}\cdot\cfrac{1}{\sin\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)}\cdot\cos\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)\cdot\cfrac{(0+1)\pi}{6}$
$=\cfrac{\cos\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)}{\sin\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)}$

となって,もとの式に戻ります。$\log\bigg\{\sin\bigg(\cfrac{(1+x)\pi}{6}\bigg)\bigg\}$ を微分すると $\cfrac{\pi}{6}$ という余計な部分が出てくるので,$\cfrac{6}{\pi}$ をかけて帳尻合わせをするという仕組みです。

$=\cfrac{6}{\pi}\Big\{\log\Big(\sin\cfrac{2\pi}{3}\Big)-\log\Big(\sin\cfrac{\pi}{6}\Big)\Big\}$
$=\cfrac{6}{\pi}\Big(\log\cfrac{\sqrt{3}}{2}-\log\cfrac{1}{2}\Big)$
$=\cfrac{6}{\pi}\Bigg(\log\cfrac{\cfrac{\sqrt{3}}{2}}{\cfrac{1}{2}}\Bigg)$
$=\cfrac{6}{\pi}\log\sqrt{3}$
$=\cfrac{6}{\pi}\log3^{\small{\frac{1}{2}}}$
$=\cfrac{3}{\pi}\log3$ (答え)