高次方程式の積分に二項定理を用いるパターン(東京都立大2017理学部第1問)

積分した式を二項定理で整理する問題やるよ。
二項定理 CC 使うヤツですよね。

(x+2)4=(x+2)^4=
4C0x420+4C1x321+4C2x222+4C3x123+4C4x024_4C_0x^4\cdot2^0+_4C_1x^3\cdot2^1+_4C_2x^2\cdot2^2+_4C_3x^1\cdot2^3+_4C_4x^0\cdot2^4

二項定理は公式より実際の例を見た方が良いです。

CC は 4C0_4C_0 から右下の値を一つずつ増やす。
xx は x4x^4 から一つずつ減らす。
22 は 202^0 から一つずつ増やす。

このルールでそれぞれの項を書いていき,4C4_4C_4 まできたら終わりです。4 乗の式なら項が一つ多い 5 個できるので,書き終えたときに書き忘れがないかチェックすると良いでしょう。

演習問題

正の実数 hh と関数 f(x)=x4f(x)=x^4 に対し,以下の問いに答えなさい。(東京都立大2017)

(1)  F(x)=1h1+hf(x)  dx\displaystyle F(x)=\int_{1-h}^{1+h}f(x)\space dx を hh の整式で表しなさい。

(2) 放物線 y=a(x1)2+b(x1)+cy=a(x-1)^2+b(x-1)+c が 3 点
(1h,f(1h))(1-h,f(1-h))(1,f(1))(1,f(1))(1+h,f(1+h))(1+h,f(1+h))
を通るとき,cc の値を求めなさい。また,aa と bb を hh の整式としてそれぞれ表しなさい。

(3) (2)で求めた a,b,ca,b,c に対して, G(h)=1h1+h{a(x1)2+b(x1)+c}  dx\displaystyle G(h)=\int_{1-h}^{1+h}\{a(x-1)^2+b(x-1)+c\}\space dx を hh の整式として表しなさい。

(4) (1)の F(h)F(h) と(3)の G(h)G(h) に対して,F(h)G(h)h5\cfrac{F(h)-G(h)}{h^5} を求めなさい。

二項定理を用いる

(1)から始めます。

 F(x)=1h1+hf(x)  dx\displaystyle F(x)=\int_{1-h}^{1+h}f(x)\space dx
=1h1+hx4  dx\displaystyle=\int_{1-h}^{1+h}x^4\space dx
=15[x5]1h1+h=\cfrac{1}{5}\Big[x^5\Big]_{1-h}^{1+h}
=15{(1+h)5(1h)5}=\cfrac{1}{5}\{(1+h)^5-(1-h)^5\} ・・・①

ここで,二項定理を用います。

(1+h)5=5C01+5C1h+5C2h2+5C3h3+5C4h4+5C5h5(1+h)^5=_5C_0\cdot1+_5C_1h+_5C_2h^2+_5C_3h^3+_5C_4h^4+_5C_5h^5 ・・・②

(1h)5=5C015C1h+5C2h25C3h3+5C4h45C5h5(1-h)^5=_5C_0\cdot1-_5C_1h+_5C_2h^2-_5C_3h^3+_5C_4h^4-_5C_5h^5 ・・・③

②-③

25C1h+25C3h3+25C5h52_5C_1h+2_5C_3h^3+2_5C_5h^5
=10h+20h3+2h5=10h+20h^3+2h^5

①に代入すると

15(10h+2h3+2h5)\cfrac{1}{5}(10h+2h^3+2h^5)
=25h5+4h3+2h=\cfrac{2}{5}h^5+4h^3+2h (答え)

再び二項定理を利用する

(2) に進みます。

y=a(x1)2+b(x1)+cy=a(x-1)^2+b(x-1)+c

最初に,(1,f(1))(1,f(1)) から考えると cc を求めることができます。

(1,f(1))(1,f(1)) を通るとき,f(x)=x4f(x)=x^4 より f(1)=1f(1)=1 だから

1=a(11)2+b(11)+c1=a(1-1)^2+b(1-1)+c
c=1c=1

よって方程式は

y=a(x1)2+b(x1)+1y=a(x-1)^2+b(x-1)+1

となります。

次に (1h,f(1h))(1-h,f(1-h)) を通るとき

(1h)4=a(1h1)2+b(1h1)+1(1-h)^4=a(1-h-1)^2+b(1-h-1)+1
(1h)4=ah2bh+1(1-h)^4=ah^2-bh+1 ・・・④

また (1+h,f(1+h))(1+h,f(1+h)) を通るとき

(1+h)4=a(1+h1)2+b(1+h1)+1(1+h)^4=a(1+h-1)^2+b(1+h-1)+1
=ah2+bh+1=ah^2+bh+1 ・・・⑤

ここから,残りの aabb を求めるために連立方程式を作りましょう。

④+⑤

(1h)4+(1+h)4=2ah2+2(1-h)^4+(1+h)^4=2ah^2+2 ・・・⑥

ここで再び二項定理。

(1h)4=4C014C1h+4C2h24C3h3+4C1h4(1-h)^4=_4C_0\cdot1-_4C_1h+_4C_2h^2-_4C_3h^3+_4C_1h^4 ・・・⑦

(1+h)4=4C01+4C1h+4C2h2+4C3h3+4C1h4(1+h)^4=_4C_0\cdot1+_4C_1h+_4C_2h^2+_4C_3h^3+_4C_1h^4 ・・・⑧

⑦,⑧を⑥に代入すると

24C01+24C2h2+24C4h4=2ah2+22_4C_0\cdot1+2_4C_2h^2+2_4C_4h^4=2ah^2+2
2+12h2+2h4=2ah2+22+12h^2+2h^4=2ah^2+2
2ah2=2h4+12h22ah^2=2h^4+12h^2
a=h2+6a=h^2+6

今度は引き算の式を使って bb を求めます。

④-⑤

(1h)4(1+h)4=2bh(1-h)^4-(1+h)^4=-2bh ・・・⑨

⑦,⑧を⑨に代入すると

2bh=24C1h24C3h3-2bh=-2_4C_1h-2_4C_3h^3
bh=4h+4h3bh=4h+4h^3
b=4h2+4=4(h2+1)b=4h^2+4=4(h^2+1)

したがって

c=1c=1
a=h2+6a=h^2+6
b=4(h2+1)b=4(h^2+1)

(答え)

積分する

(3)に進みます。

 G(h)=1h1+h{a(x1)2+b(x1)+c}  dx\displaystyle G(h)=\int_{1-h}^{1+h}\{a(x-1)^2+b(x-1)+c\}\space dx

(2)より

 =1h1+h{(h2+6)(x1)2+4(h2+1)(x1)+1}  dx\displaystyle =\int_{1-h}^{1+h}\{(h^2+6)(x-1)^2+4(h^2+1)(x-1)+1\}\space dx
=[h2+63(x1)3+2(h2+1)(x1)2+x]1h1+h\displaystyle=\Big[\cfrac{h^2+6}{3}(x-1)^3+2(h^2+1)(x-1)^2+x\Big]_{1-h}^{1+h}
=h2+63h3+2(h2+1)h2+1+hh2+63(h)32(h2+1)(h)21+h=\cfrac{h^2+6}{3}h^3+2(h^2+1)h^2+1+h-\cfrac{h^2+6}{3}(-h)^3-2(h^2+1)(-h)^2-1+h
=23(h2+6)h3+2h=\cfrac{2}{3}(h^2+6)h^3+2h
=23h5+4h3+2h=\cfrac{2}{3}h^5+4h^3+2h (答え)

代入して計算する

(4)に進みます。ここは(1)と(3)の結果を代入して計算するだけです。

F(h)G(h)h5\cfrac{F(h)-G(h)}{h^5}
=1h5(25h5+4h3+2h23h54h32h)=\cfrac{1}{h^5}\Big(\cfrac{2}{5}h^5+4h^3+2h-\cfrac{2}{3}h^5-4h^3-2h\Big)
=1h5(415h5)=\cfrac{1}{h^5}\Big(-\cfrac{4}{15}h^5\Big)
=415=-\cfrac{4}{15} (答え)