【IIB数列】卵が先かニワトリが先か。数列の一般項を推定して帰納法で証明(九州大2021文系第4問)

以下の問いに答えよ。(九州大2021)

(1) $n$ を自然数とするとき,

$\displaystyle\sum_{k=1}^n k2^{k-1}$

を求めよ。

(2) 次のように定義される数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ。

$a_1=2$,$\displaystyle a_{n+1}=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^n(n+1-k)a_k$ $(n=1,2,3,\cdots\cdots)$

引き算で数列の和を求める

(1)から始めます。

$S_n=\displaystyle\sum_{k=1}^n k2^{k-1}$ とすると

$\begin{matrix}&S_n&=&1&+&2\cdot2&+&3\cdot2^2&+&4\cdot2^3&+\cdots+&n2^{n-1}\\-)&2S_n&=&&&2&+&2\cdot2^2&+&3\cdot2^3&+\cdots+&(n-1)2^{n-1}&+&n2^n\\\hline&-S_n&=&1&+&2&+&2^2&+&2^3&+\cdots+&2^{n-1}&-&n2^n\end{matrix}$

つまり,$-S_n$ は初項 1,公比 2 の等比数列の和です。ただし,最後の $-n2^n$ だけ等比数列ではないので注意しましょう。

ここで,等比数列の和の公式を使いましょう。

等比数列 $ar^{n-1}$ の和は

$S_n=\cfrac{a(r^n-1)}{r-1}$

よって

$-S_n=\cfrac{1\cdot(2^n-1)}{2-1}-n2^n$
$=2^n-1-n2^n$

したがって

$S_n=n2^n-2^n+1$
$=(n-1)\cdot2^n+1$ (答え)

数列の一般項を帰納法で証明する

(2)に進みます。

(1)で行ったことの延長で,式どうしを引き算することを考えてみると良いでしょう。

$\displaystyle a_{n+1}=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^n(n+1-k)a_k$ ・・・①

だから

$\displaystyle a_{n}=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^{n-1}\{(n-1)+1-k\}a_k$
$\displaystyle =1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^{n-1}(n-k)a_k$ $(n\geqq2)$ ・・・②

この式のシグマは $k=1$ から $n-1$ までだから,$n$ が 2 以上のときにしか成り立たないことに注意しましょう。

$n=1$ だと,$k=1$ から 0 まで計算するってなって,成り立たない。

式の $\cfrac{1}{2}$ がやっかいなので 2 倍して引き算します。

2×(①-②)

$\displaystyle2(a_{n+1}-a_n)=2+\sum_{k=1}^n(n+1-k)a_k-2-\sum_{k=1}^{n-1}(n-k)a_k$
$\displaystyle=\sum_{k=1}^n(n+1-k)a_k-\sum_{k=1}^{n-1}(n-k)a_k$
$=na_1+(n-1)a_2+(n-2)a_3+\cdots+a_n-\{(n-1)a_1+(n-2)a_2+(n-3)a_3+\cdots+a_{n-1}\}$

2 行に分けて書いた方が分かりやすいかも。

$\begin{matrix}&na_1&+&(n-1)a_2&+&(n-2)a_3&+\cdots+&2a_{n-1}&+&a_n\\-)&(n-1)a_1&+&(n-2)a_2&+&(n-3)a_3&+\cdots+&a_{n-1}\\\hline&a_1&+&a_2&+&a_3&+\cdots+&a_{n-1}&+&a_n\end{matrix}$

つまり

$a_{n+1}-a_n=\cfrac{1}{2}(a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n)$

これ,要するに階差数列だよね。階差の部分をいったん $b_n$ とするといいよ。

$b_n=a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n$ とすると

$\displaystyle b_n=\sum_{k=1}^na_k$

となります。階差数列の一般項は公式がありました。

数列 $\{a_n\}$ の階差数列を $\{b_n\}$ とすると

$n\geqq2$ のとき $\displaystyle a_n=a_1+\sum_{k=1}^{n-1}b_k$

よって

$\displaystyle a_n=2+\sum_{k=1}^{n-1}b_k$ $(n\geqq2)$

答えに近づいたように見えますが,問題は $b_k$ です。$b_n$ は $a_n$ の和だから,結局のところ $a_n$ の正体が分からないと $b_n$ を求めることができません。

つまり $a_n$ の一般項が分からないと,$a_n$ の一般項が分からないという仕組み。
意味不明。

一般項を推定する

このままではどうにもならないので,いったん $a_2$ 以降を実際に求めてみましょう。

$\displaystyle a_{n+1}=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^n(n+1-k)a_k$ より

$\displaystyle a_2=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^1(2-k)a_k$
$\displaystyle=1+\cfrac{1}{2}a_1=1+\cfrac{1}{2}\cdot2=2$

$\displaystyle a_3=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^2(3-k)a_k$
$=1+\cfrac{1}{2}(2a_1+a_2)$
$=1+\cfrac{1}{2}(2\cdot2+2)=4$

$\displaystyle a_4=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^3(4-k)a_k$
$=1+\cfrac{1}{2}(3a_1+2a_2+a_3)$
$=1+\cfrac{1}{2}(3\cdot2+2\cdot2+4)=8$

$\displaystyle a_5=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^4(5-k)a_k$
$=1+\cfrac{1}{2}(4a_1+3a_2+2a_3+a_4)$
$=1+\cfrac{1}{2}(4\cdot2+3\cdot2+2\cdot4+8)=16$

よって $a_n$ は $2,2,4,8,16,\cdots$ となる数列です。

等比数列ですか?
$a_2$ 以降は等比だね。ただ,$a_1$ と $a_2$ だけ等比になってないよね。
ナニ数列?
一部は等比数列だけど,全体としては等差でも等比でもない。こういう数列もあり得るってこと。

$a_1$ を除く $a_n$ はこのように推定できます。

$a_n=2^{n-1}$ $(n\geqq2)$

これ,答えですか。
答えに見えるけど,これはあくまでも推定だから,$a_6$ 以降も本当にこれで合ってるかどうかは分からない。これが正しいことを証明しないといけない。
どうやって?
数学的帰納法。

数学的帰納法で式が成り立つことを証明する

$a_n=2^{n-1}$ $(n\geqq2)$ ・・・(*)とする。

[1] $n=2$ のとき

$\displaystyle a_2=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^1(2-k)a_k=2$

よって,$n=2$ のとき,(*)が成り立つ。

[2] $n=m$ のとき(*)が成り立つと仮定すると

$n=m+1$ のとき

$\displaystyle a_{m+1}=1+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^m(m+1-k)a_k$
$a_{m+1}-a_m=\cfrac{1}{2}(a_1+a_2+a_3+\cdots+a_m)$
$\displaystyle a_{m+1}-a_m=\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^ma_k$
$\displaystyle a_{m+1}=a_m+\cfrac{1}{2}\sum_{k=1}^ma_k$

ここで,仮定している $a_n=2^{n-1}$ を使う。
仮定って代入していいの?
ここは $a_{m+1}$ についての証明だから,左辺の $a_{m+1}$ に代入したらダメだけど,右辺なら代入して良い。$a_n=2^{n-1}$ なら $a_{n+1}=2^n$ ってなるはずだから,計算の結果,右辺が $2^m$ になれば仮定は正しかったってことになって,証明できたことになる。
分かるような分からないような。
逆に言うと,仮定の式を代入して $a_{m+1}=2^m$ にならなかったら,仮定そのものが間違いってことになる。もし,仮定を代入して式が成り立つなら,仮定は正しかったと言えるよね。

$a_n=2^{n-1}$ を右辺に用いて

$\displaystyle a_{m+1}=2^{m-1}+\cfrac{1}{2}\Big(\sum_{k=1}^m2^{k-1}-1+2\Big)$

うしろの $-1+2$ は?

今回やっかいなのは $a_1$ と $a_2$ の間が等比になっていないところです。$a_n=2^{n-1}$ とすると,初項 $a_1$ は 1 となり,話が合いません。$2^{n-1}$ の和は

$=1+2+4+8+16+\cdots$

となるので,1 を引いて

$2+4+8+16+\cdots$

2を足して

$2+2+4+8+16+\cdots$

となり,本来の数列の和になるのです。

$a_n=2^{n-1}$ が成り立つのはあくまで $n$ が 2 以上のときの話。$\displaystyle\sum_{k=1}^m2^{k-1}$ だけだと初項が異なることを考慮していないのだから,つじつま合わせしないといけない。
結構,強引につじつま合わせますな。
だね。

$\displaystyle\sum_{k=1}^m2^{k-1}$ は初項 1,公比 2 の等比数列の和だから

$a_{m+1}=2^{m-1}+\cfrac{1}{2}\Big\{\cfrac{1\cdot(2^m-1)}{2-1}-1+2\Big\}$

よって

$a_{m+1}=2^{m-1}+\cfrac{1}{2}(2^m-1-1+2)$
$a_{m+1}=2^{m-1}+\cfrac{1}{2}\cdot2^m$
$=2^{m-1}+2^{m-1}$
$=2\cdot2^{m-1}$
$=2^m$

よって,$n=m+1$ のときも(*)が成り立つ。

[1],[2]から,2 以上のすべて自然数 $n$ について式が成り立つ。

したがって,$a_n$ の一般項は

$a_1=2$
$a_n=2^{n-1}$ ($n\geqq2$ のとき)

(答え)

まとめ

今回は数列の問題の中でも難関大向けのものにチャレンジしました。学習した内容は以下です。

・数式の操作だけで一般項が求められないとき,実際にいくつか値を求めてみて,そこから一般項を推定する。

・推定した数列が正しいことを示すために数学的帰納法を用いて証明する。

・数列が初項だけ例外扱いになる場合のつじつま合わせの方法。