指紋が犯罪捜査に使われるようになったきっかけ 発見者の一人は縄文土器を眺めていた

指紋と言えば警察の捜査で犯人を特定するための証拠としておなじみです。指紋が犯罪捜査に使われるようになったのは 1880 年ごろからと言われており、日本で言えば明治時代に大日本帝国憲法が公布されたころですから、案外昔から使われていたことに気づきます。今日、指紋が犯罪捜査に利用されるようになったきっかけを生んだ人物として三人の欧米人が知られているのですが、そのうちの一人は日本に在留していました。

”ある日、ヘンリー・フォールズは古代の日本の陶器を見ているときに、それに小さな線が並んでいることに気づいた。彼はその線が 2000 年前の指紋ではないかという考えに至った。フォールズは「指紋はその人ごとに固有のものだろうか」と疑問に思った。彼は自分の医学校ですべての友人、同僚、生徒の指紋を取り始めた。それぞれの指紋は固有のものであった。彼はまた「人の指紋を変えることはできるだろうか」と思った。彼はそれを確かめるためにかみそりを使って自分の指から指紋を削りとった。指紋は元に戻っただろうか。戻ったのである。(日本大)”

指紋の活用に貢献した3人の人物

西洋社会では、指紋はもともとビジネス文書などで長い間使われてきました。日本で言うところの印鑑みたいなものです。そして、1880 年代に3人の人物によって指紋が実際に犯罪捜査に使用されるようになります。そうは言っても、その3人はそれぞれ世界のまったく別な場所で暮らしていました。

一人はウィリアム・ハーシェルで、インドにいました。彼は仕事で指紋が捺印された書類を扱っていたのですが、ある日その指紋に興味を抱き、家族や友人などから大量の指紋を集め、それが時間が経っても変化しないことを発見しました。

二人目はスコットランド人の医師ヘンリー・フォールズ(写真)で日本に住んでいました。彼は遺跡から発掘された古代の土器に残された指紋に興味を持ち、家族や友人、生徒たちから指紋を集めました。彼もまた指紋が変化しないことを突き止めました。

三人目はフランシス・ゴルトンです。彼はチャールズ・ダーウィンの従兄にあたり、イギリスに住んでいました。

彼は Galton Details と呼ばれる指紋の識別技法を発明しました。それによって指紋のパターンの中から特徴的な部分を見つけ出し、他の人物の指紋と区別することができるようになったのです。ゴルトンの貢献によって、指紋はようやく実用的な方法として犯罪捜査に使用できるようになったのです。

今日ではコンピューター上に膨大な数の指紋のデータベースが構築されています。それらは国際的な犯罪の捜査にも役立っているのですが、一方で膨大なデータを集めてみると、地球上のまったく異なった場所に住む別々の人物の指紋が偶然一致することもあることが分かってきました。指紋はその人物を特定するための方法として必ずしも完璧ではないのです。