【数Ⅲ積分】e^x sin x の積分を「微分の逆」から求めてみる(原始関数の推定)

今回は、$e^x \sin{x}$ の積分を「微分の逆」を使って原始関数を推定する方法で解いてみましょう。

謎の用語が多すぎです!

まあ、用語気にしないでもやっていけば分かるから。

部分積分が使えない

いつもは式が積の形なら部分積分を考えるのですが、$e^x$ はいくら微分しても $ e^x $ のままで、$\sin{x}$ も微分したところで $\sin{}$ と $\cos{}$ を繰り返すだけなので、いつまでも答えが出ません。

そこで、原始関数を推定していきます。原始関数とは簡単に言えば積分の答えということですし、微分すると元の式に戻る関数だとも言えます。

ここで、どんな式を微分したら $e^x \sin{x}$ になるのかを推定しようというワケです。

さっぱり想像できません!

とりあえず微分してつじつま合わせでオッケー

ここは、慣れの問題というか経験値が大切です。やり方としてはとりあえず式を微分してみましょう。

$(e^x\sin{x})’=e^x\sin{x}+e^x\cos{x}$ …①

ここは普通にかけ算の式の公式で微分できます。ところが、今回は $\sin{}$ が入った式の積分なので、$\cos{}$ が出てくるのは都合が悪いですよね。

なんとかして $\cos{}$ を消去したいのです。そこで、今度は $\cos{}$ の式を作ってみます。

$(e^x\cos{x})’=e^x\cos{x}-e^x\sin{x}$ …②

ここで①から②を引きます。

$ (e^x\sin{x}-e^x\cos{x})’=2e^x\sin{x}$
$\displaystyle\frac{1}{2}(e^x\sin{x}-e^x\cos{x})’=e^x\sin{x}$

左辺の式は微分すると $e^x \sin{x}$ になるので

$\displaystyle\int{e^x \sin{x}}\enspace dx=\frac{e^x(\sin{x}-\cos{x})}{2}+C$ (答え)

流れはある程度パターン化できます。①とりあえず式を微分、②もとの式が $\sin{}$ なら $\cos{}$ でもう一つ式をつくる、③式同士を足すか引くかして、いらないほうを消去。

推定した気が全然しませんが。

大丈夫、ちゃんと推定になっています。元の式を微分した結果からつじつま合わせをして原始関数を導いています。微分したら $e^x \sin{x}$ になる式を作る作業自体が逆向きに言えば積分の答え(原始関数)を推定して求めていく作業になっているのです。微分の反対が積分なのだから、微分の作業をさかのぼれば積分になるという理屈です。

類題1

$\displaystyle\int{\frac{\sin{x}}{e^x}}\enspace dx$

ここで、$\frac{1}{e^x}=e^{-x}$として

$(e^{-x}\sin{x})’=-e^{-x}\sin{x}+e^{-x}\cos{x}$…①
$(e^{-x}\cos{x})’=-e^{-x}\cos{x}-e^{-x}\sin{x}$…②
($e^{-x}$は合成関数だから、$(e^{-x})’=e^{-x}\cdot(-1)=-e^{-x}$であることに注意)

①+②より

$(e^{-x}\sin{x}+e^{-x}\cos{x})’=-2e^{-x}\sin{x}$
$\displaystyle -\frac{1}{2}(e^{-x}\sin{x}+e^{-x}\cos{x})’=e^{-x}\sin{x}$

よって、

$\displaystyle\int{\frac{\sin{x}}{e^x}}\enspace dx$
$\displaystyle=-\frac{e^{-x}(\sin{x}+\cos{x})}{2}+C$

(答え)

類題2

$\displaystyle\int{e^{2x}\cos{x}}\enspace dx$

$(e^{2x}\cos{x})’=2e^{2x}\cos{x}-e^{2x}\sin{x}$…①
$(e^{2x}\sin{x})’=2e^{2x}\sin{x}+e^{2x}\cos{x}$…②

①×2+②より

$(2e^{2x}\cos{x}+e^{2x}\sin{x})’=5e^{2x}\cos{x}$
$\displaystyle\frac{e^{2x}(\sin{x}+2\cos{x})’}{5}=e^{2x}\cos{x}$

よって

$\displaystyle\int{e^{2x}\cos{x}}\enspace dx=\frac{e^{2x}(\sin{x}+2\cos{x})}{5}+C$

(答え)

積分の反対は微分であることを活用する

今回取り上げた問題は部分積分を2回繰り返す方法でも解くことができます。その解き方も大切なのですが、実際の入試ではこちらの方法で融通が利く場合が多いでしょう。これも一つのパターンではあるので、$e^x$ と $\sin{},\cos{}$が組み合わさった式を見たらこの方法で解けないか試してみましょう。