【数III積分】置換積分が何をやってるのか分からないので掘り下げて考えてみる

置換積分って「とにかくやり方覚えろ」みたいな感じで習ったけど,結局何やってるかよく分かってないです。
まあ,ほとんどの高校生そんなもの。微積は掘り下げると迷宮に入るからね。ぼちぼち掘り下げるくらいの説明はできるから,一緒に考えてみようか。

ルートの置き換え

$\displaystyle\int\cfrac{x}{\sqrt{x+1}}\space dx$

不定積分の問題。ここはパターンで,ルートあったらルートごと置換するとよい。

$\sqrt{x+1}=t$ とおくと,両辺を2乗して

$x+1=t^2$

$x=t^2-1$

両辺を微分して

$dx=2t\space dt$

なんで微分でこれになるの?

dx=2t dt の意味

なぜ $dx=2t\space dt$ のような書き方をするのかというと,「そういう決まりだから」というのが答えです。ただ,もう少し掘り下げて考えみましょう。

例として,$y=x^2$,微分して $dy=2x\space dx$ の場合で考えてみます。

微分した値は接線の傾きを表します。たとえば,$x=4$ なら接線の傾きは $2\times4=8$ です。これは横向きの変位量を 1 とするとタテ向きの変位量が 8 になる,つまり $1:8$ の関係と言えます。また,この横とタテの比は $x$ の値,つまり横方向の位置によって変わります。

これをもう少し別な書き方で表してみましょう。

横向きの微小な変位量を $\Delta x$,タテ向きの微小な変位量を $\Delta y$ とすると

$\Delta y=2x\cdot\Delta x$

となります。

しかしながら,$\Delta x$ は「めちゃくちゃ小さい何らかの値」であって,通常の $x$ のように値を代入することができません。極限で習った $\infty$ と同じ扱いです。

とは言え,代入できないと言っておいて,実は代入する考えもあります。例えば,$x=4$,$\Delta x=0.0001$ とすると,$\Delta y=0.0008$ となり,タテと横の大きさの具体的なイメージを想像する上では役に立つでしょう。

しかし,実際は $\Delta x$ や $\Delta y$ は決まった大きさをもちません。$\Delta y=2x\cdot\Delta x$ という式は $\infty=2x\cdot\infty$ という式を作るのと同じようなものであって,本来は成り立たないのです。

ここで表したいものは接線の傾き,つまり横とタテの比です。

そこで,「横向きの微小な変位量を $2x$ 倍したものがタテ向きの微小な変位量である」というのをいちいち文で書くわけにもいかないので,次のような書くことします。

$dy=2x\space dx$

これは見方を変えれば,$dy$ と $2x\space dx$ は同じだから置き換えてよい,ということです。こうして置換の発想が出てきます。

置換積分で微分を行う仕組み

置換積分で行っている操作とはこういうことです。$dy$ と $dx$ の比から積分することが難しい場合,いったん $dx$ と $dt$ の比を考えることで,$dy$ と $dx$ の比を,$dy$ と $dt$ の比に置き換えようとしているのです。

$t$ の微小な変位量の $2t$ 倍が $x$ の微小な変位量であり

$\sqrt{x+1}=t$,$x=t^2-1$ より, $\cfrac{x}{\sqrt{x+1}}=\cfrac{t^2-1}{t}$

よって,$t$ の微小な変位量の $2t$ 倍の $\cfrac{t^2-1}{t}$ 倍が $y$ の微小な変位量である,ということになります。

これで,$x$ が消え,$t$ の微小な変位量と $y$ の微小な変位量の関係式になりました。 こうして $\displaystyle\int\cfrac{x}{\sqrt{x+1}}\space dx=\int \cfrac{t^2-1}{t}\cdot 2t\space dt$ が成り立つのです。

何となくわかったけど,結構複雑。
だね。

置換が終わればあとは普通に積分の計算をしていきます。

$\displaystyle\int\cfrac{t^2-1}{t}\cdot2t\space dt=2\int t^2-1\space dt$

$=2\Big(\cfrac{t^3}{3}-t\Big)+C=\cfrac{2}{3}t(t^2-3)+C$

$t=\sqrt{x+1}$ より

$=\cfrac{2}{3}\sqrt{x+1}(x+1-3)+C$

$=\cfrac{2}{3}(x-2)\sqrt{x+1}+C$ ($C$は積分定数)・・・(答)

三角関数の置換

基本的な仕組みを理解したところで,これを三角関数の式に利用してみましょう。

$\displaystyle\int\cfrac{\cos^3x}{1-\sin x}\space dx$

この問題は少しテクニックが必要で,いったん式を変形してから置換します。

$=\displaystyle\int\cfrac{\cos^3x(1+\sin x)}{(1-\sin x)(1+\sin x)}\space dx$

$\displaystyle=\int\cfrac{\cos^3x(1+\sin x)}{1-\sin^2x}\space dx$

$\displaystyle=\int\cfrac{\cos^3x(1+\sin x)}{\cos^2x}\space dx$

$\displaystyle=\int\cos x(1+\sin x)\space dx$

$\sin x=t$ とすると

$\cos x\space dx=dt$

$dx=\cfrac{dt}{\cos x}$

これでうまいこと $\cos x$ が消去できる。

$\displaystyle=\int\cos x(1+t)\cdot\cfrac{dt}{\cos x}$

$\displaystyle=\int1+t\space dt$

$=t+\cfrac{t^2}{2}+C$

$=t\Big(1+\cfrac{t}{2}\Big)+C$

$=\sin x\Big(1+\cfrac{\sin x}{2}\Big)+C$ ($C$は積分定数) ・・・(答)

何を置換するかってのはひらめきだけど,経験値が必要。とにかく色々問題解いてみてレベルアップすべし。