4次関数と極値-微分係数が 0 でも極値をもたない場合&線形計画法と曲線(横浜国立大2016文系第2問)
実数 $a$,$b$ に対し,関数
$f(x)=x^4+2ax^3+(a^2+1)x^2-a^3+a+b$
がただ 1 つの極値をもち,その極値が 0 以上になるとする。次の問いに答えよ。
(1) $a$,$b$ のみたす条件を求めよ。
(2) $a$,$b$ が(1)の条件をみたすとき,$a-2b$ の最大値を求めよ。
微分係数が0でも極値であるとは限らない
(1)から始めます。
まず,式を微分して極値を考えてみます。
$f(x)=x^4+2ax^3+(a^2+1)x^2-a^3+a+b$
$f'(x)=4x^3+6ax^2+2(a^2+1)x$
$=2x(2x^2+3ax+a^2+1)$
$2x(2x^2+3ax+a^2+1)=0$ とすると
$x=0$
または
$2x^2+3ax+a^2+1=0$
よって,$x=0$ のときに微分係数が 0 になるのですが,だからと言って $f(x)$ が必ずしも極値をとるわけではありません。$x=0$ の前後で微分係数のプラス・マイナスが入れ替わるならば極値であると言えますが,符号が同じならば極値をとりません。
$2x(2x^2+3ax+a^2+1)$ について考えてみましょう。まず,$2x$ は $x=0$ の前後で符号が入れ替わります。そして,もし $2x^2+3ax+a^2+1$ が $x=0$ の前後で符号が変わらないならば,式全体としては,$x=0$ の前後で符号が入れ替わるといえます。
ある関数が $x=0$ の前後で符号が入れ替わるなら,その関数は原点を通過するはずです。
しかし,$2x^2+3ax+a^2+1$ に $x=0$ を代入すると $a^2+1$ となり,$a$ の値にかからわず正の値をとります。よって,原点を通過することはありません。
よって,$2x^2+3ax+a^2+1$ は $x=0$ の前後で符号が入れ替わることはなく,一方で $f'(x)$ は $x=0$ の前後で符号が入れ替わることになります。よって,$f(x)$ は $x=0$ のとき極値をもちます。
問題文から,極値は 0 以上だから
$f(0)=-a^3+a+b\geqq0$
$b\geqq a^3-a$
となります。
$f(x)$ はただ 1 つの極値をもつので,$x=0$ で極値をもつとき,$2x^2+3ax+a^2+1$ は解なしであると考えられます。ちなみに $x=0$ が解になることはありません。
$x=0$ を代入すると
$a^2+1=0$ ⇔ $a=i$ ($a$は実数より不適)
$2x^2+3ax+a^2+1$ が解をもたないとき,判別式を用いて
$D=9a^2-8a^2-8<0$
$a^2-8<0$
$(a+2\sqrt{2})(a-2\sqrt{2})<0$
よって $-2\sqrt{2}<a<2\sqrt{2}$
ここで,もう一つ見落としているものがあります。$2x^2+3ax+a^2+1$ が解をもつとしても,その前後で微分係数のプラス・マイナスが入れ替わらないならば,極値をもたないことになります。
$2x^2+3ax+a^2+1$ は 2 次関数だから,実数解を 2 つもつ場合,プラス・マイナスの入れ替わりが起こります。しかし,実数解が 1 つの場合には,符号は入れ替わりません。
そこで,判別式を用いて実数解が 1 個の場合を検討しましょう。
$D=9a^2-8a^2-8=0$
$a^2-8=0$
$a=\pm2\sqrt{2}$
つまり,$a=\pm2\sqrt{2}$ のとき,$f'(x)$ は $x=0$ 以外にも解をもち,微分係数が 0 になるのですが,それは極値にはならないので,$f(x)$ は $x=0$ でただ 1 つの極値をもつことになります。
したがって,$a$,$b$ のみたす条件は
$-2\sqrt{2}\leqq a\leqq2\sqrt{2}$
$b\geqq a^3-a$
(答え)
a,b のグラフをつくって考える
(2)に進みます。
(1) で $a$,$b$ の条件が分かったので,まずは $a$ を横軸,$b$ を縦軸としたグラフを描いてみましょう。
$g(a)=a^3-a$ とすると
$g'(a)=3a^2-1$
$3a^2-1=0$ とすると
$a=\pm\cfrac{1}{3}$
増減表は
$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|}\hline a&-2\sqrt{2}&\cdots&-\frac{1}{3}&\cdots&0&\cdots&\frac{1}{3}&\cdots&2\sqrt{2}\\\hline g'(a)&&+&0&-&-&-&0&+\\\hline g(a)&-14\sqrt{2}&\nearrow&\frac{8}{27}&\searrow&0&\searrow&-\frac{8}{27}&\nearrow&14\sqrt{2}\\\hline\end{array}$
$g(-2\sqrt{2})=(-2\sqrt{2})^3-(-2\sqrt{2})=-14\sqrt{2}$
$g\Big(-\cfrac{1}{3}\Big)=\Big(-\cfrac{1}{3}\Big)^3-\Big(-\cfrac{1}{3}\Big)=\cfrac{8}{27}$
$g(0)=0$
$g\Big(\cfrac{1}{3}\Big)=\Big(\cfrac{1}{3}\Big)^3-\Big(\cfrac{1}{3}\Big)=-\cfrac{8}{27}$
$g(2\sqrt{2})=(2\sqrt{2})^3-2\sqrt{2}=14\sqrt{2}$
次に $a-2b=k$ とすると
$b=\cfrac{a}{2}-\cfrac{k}{2}$
となります。これは,$a$ の 1 次関数であり,$-\cfrac{k}{2}$ が切片となります。
あとは,直線が領域を通過しつつ,$-\cfrac{k}{2}$ がもっとも小さくなる場合を考えれば $k$ の最大が求められます。
直線をタテ方向に並行移動していくと,$k$ の値が最小になりそうな点が 2 点あることがわかります。実際に試験問題を解いているときには,グラフはあくまでおおまかなものしか描けないので,実際にどちらの方が $k$ の値が小さくなるかは計算で求めていくことになります。
(i) 直線が $(a,b)=(-2\sqrt{2},-14\sqrt{2})$ を通るとき
$k=a-2b$
$=-2\sqrt{2}-2(-14\sqrt{2})$
$=26\sqrt{2}$
(ii) $b=a^3-a$ と $b=\cfrac{a}{2}-\cfrac{k}{2}$ が $0<a<2\sqrt{2}$ の範囲で 1 点で交わるとき
直線の傾きは $\cfrac{1}{2}$ だから,曲線の微分係数も $\cfrac{1}{2}$ です。
$3a^2-1=\cfrac{1}{2}$ とすると
$3a^2=\cfrac{3}{2}$
$a>0$ より
$a=\cfrac{\sqrt{2}}{2}$
$g\Big(\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)=\Big(\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)^3-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$
$=-\cfrac{\sqrt{2}}{4}$
つまり直線と曲線は $(a,b)=\Big(\cfrac{\sqrt{2}}{2},-\cfrac{\sqrt{2}}{4}\Big)$ で接することになります。
これを代入して $k$ の値を求めましょう。
$k=\cfrac{\sqrt{2}}{2}-2\Big(-\cfrac{\sqrt{2}}{4}\Big)=\sqrt{2}$
$26\sqrt{2}$ と $\sqrt{2}$ を比べれば $26\sqrt{2}$ の方が大きいのは明らかです。
したがって
$a-2b$ の最大値は $26\sqrt{2}$ (答え)
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