log(x+1) の積分と極限(東京都立大2020理系第1問)

$f(x)=\log(x+1)$ とするとき,以下の問いに答えなさい。ただし,$log$ は自然対数とする。

(1) $f(x)$ の不定積分 $\displaystyle\int f(x)\space dx$ を求めなさい。

(2) 自然数 $n$ に対し,曲線 $y=f(x)$ 上の点 $(n,f(n))$ における接線を $l_n$ とする。曲線 $y=f(x)$ と接線 $l_n$ と直線 $x=2n$ で囲まれた図形の面積 $S_n$ を求めなさい。

(3) 極限値 $\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{S_n}{n}$ を求めなさい。

log の不定積分

(1)から始めます。

$\displaystyle\int f(x)\space dx$
$\displaystyle=\int\log(x+1)\space dx$

log の積分習った気がするけど,やり方忘れた。
結局暗記なんだけどね。log を積分する公式はないけど,微分する公式はあるから,いったん微分したらいいんじゃね?って考えるの。そこから部分積分を思いつけばいけるんじゃないかな。

$\displaystyle=\int(x)’\log(x+1)\space dx$

$(x)’=1$ だから,上の式とイコール関係が成り立つ。

部分積分法
$\displaystyle\int f(x)g'(x)dx=f(x)g(x)-\int f'(x)g(x)dx$

$\displaystyle=x\log(x+1)-\int x\cdot\{\log(x+1)\}’\space dx$
$\displaystyle=x\log(x+1)-\int \cfrac{x}{x+1}\space dx$

このままでは積分できませんが,分子の有理化をやるとうまくいきます。

なんで分子の有理化やるの?
分母にも分子にも $x$ があるとうまく計算できないから,どっちかだけに $x$ がある状態に持っていきたいの。この式は分母の $x$ は消せないけど,分子の $x$ なら消せる。

$\cfrac{x}{x+1}=\cfrac{x+1-1}{x+1}$
$=\cfrac{x+1}{x+1}-\cfrac{1}{x+1}$
$=1-\cfrac{1}{x+1}$

となるので

$\displaystyle=x\log(x+1)-\int 1-\cfrac{1}{x+1}\space dx$
$=x\log(x+1)-x+\log(x+1)+C$
$=(x+1)\cdot\log(x+1)-x+C$ ($C$は積分定数)

(答え)

面積を求める

(2)に進みます。

まずは,接線の方程式を求めましょう。

$f(x)=\log(x+1)$ より

$f'(x)=\cfrac{1}{x+1}$

よって,$x=n$ のときの接線の傾きは $\cfrac{1}{n+1}$

$l_n:y-f(n)=f'(n)(x-n)$
$y=\cfrac{1}{n+1}(x-n)+\log(n+1)$

積分区間は $n$ から $2n$ です。$l_n$ から $f(x)$ を引いた部分を積分していきましょう。

$\displaystyle S_n=\int_n^{2n}\cfrac{1}{n+1}(x-n)+\log(n+1)-\log(x+1)\space dx$

$\displaystyle=\int_n^{2n}\cfrac{1}{n+1}x-\cfrac{n}{n+1}+\log(n+1)-\log(x+1)\space dx$

なんか,ゴチャゴチャ。
頭の中きちんと整理整頓して。ここでは,$x$ について積分するのだから,$n$ は定数。

つまり,$\cfrac{n}{n+1}$ と $\log(n+1)$ はただの定数項です。たとえば,$3$ を積分したら $3x$ となるように,定数項の積分は $x$ を付けるだけです。

また,$\log(x+1)$ の積分は(1)の答えを利用しましょう。

$=\Big[\cfrac{1}{n+1}\cdot\cfrac{x^2}{2}-\cfrac{n}{n+1}x+x\log(n+1)-(x+1)\log(x+1)+x\Big]_n^{2n}$
$=\cfrac{4n^2}{2(n+1)}-\cfrac{2n^2}{n+1}+2n\log(n+1)-(2n+1)\log(2n+1)+2n-\cfrac{n^2}{2(n+1)}+\cfrac{n^2}{n+1}-n\log(n+1)+(n+1)\log(n+1)-n$
$=\cfrac{3n^2}{2(n+1)}-\cfrac{n^2}{n+1}+(2n+1)\log(n+1)-(2n+1)\log(2n+1)+n$
$=\cfrac{n^2}{2(n+1)}+(2n+1)\log\cfrac{n+1}{2n+1}+n$ (答え)

極限を求める

(3)に進みます。(2)の答えを $n$ で割って極限を求めます。

$\cfrac{S_n}{n}=\cfrac{n}{2(n+1)}+\cfrac{2n+1}{n}\log\cfrac{n+1}{2n+1}+1$

極限を求めるので,分母と分子の両方に $n$ があると,いわゆる不定形になってしまいます。不定形を解消しましょう。

不定形の解消のやり方は,基本は $n$ で割ることです。また,(1)でやった分子の有理化も使えます。今回は,その両方を使います。

$=\cfrac{n+1-1}{2(n+1)}+\Big(2+\cfrac{1}{n}\Big)\log\cfrac{1+\cfrac{1}{n}}{2+\cfrac{1}{n}}+1$
$=\cfrac{1}{2}-\cfrac{1}{2(n+1)}+\Big(2+\cfrac{1}{n}\Big)\log\cfrac{1+\cfrac{1}{n}}{2+\cfrac{1}{n}}+1$

したがって

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{S_n}{n}$
$=\cfrac{1}{2}-0+(2+0)\log\cfrac{1+0}{2+0}+1$
$=\cfrac{3}{2}+2\log\cfrac{1}{2}$
$=\cfrac{3}{2}+2(\log1-\log2)$

$\log1=0$ より

$=\cfrac{3}{2}-2\log2$ (答え)